2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Ivory Carver Ando Ryokuzan
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17K02337
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Research Institution | Mitsui Bunko |
Principal Investigator |
小林 祐子 公益財団法人三井文庫, 文化史研究室, 学芸員 (60399334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 安藤緑山 / 近代工芸 / 牙彫 / 彩色牙彫 / 象牙彫刻 / 金田兼次郎 / 超絶技巧 / X線透過分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.2019年度も前年同様、安藤緑山の牙彫の調査を継続した。国内では東京、京都、大阪などの所蔵機関および個人コレクター方において、国外ではロシアの個人コレクター方において作品調査を実施した。調査では作品の熟覧、採寸、および全図・部分図・作者銘・付属品などの詳細な写真撮影をおこなった。作品情報、撮影した写真はデータベースを用いて整理した。 2.2018年度に調査を実施した、緑山の有力なプロデューサーであった牙彫商・金田兼次郎が制作を手がけた大型作品「牙彫大鷲置物」(スコットランド国立博物館蔵)と同工作品である、ロシア国立東洋美術館所蔵「牙彫大鷲置物」の調査が実現した。明治天皇からニコライ2世の即位式に際し贈られたという来歴などを確認、さらに同博物館が過去に実施した保存修復データの提供を受け、ネジや金属棒を用いて各部材を接合する作品構造が緑山の手法と共通するものであることを確認した。 3.さらに本調査の過程において、安藤緑山以外の作者(中川竜英、中川寿雄、高木芳真など)もわずかではあるが彩色した牙彫を制作していたことが判明した。緑山の牙彫との比較・検討が必要となったことから、調査対象をこれらの作者にも広げ、国内では東京、京都、佐賀などの所蔵機関および個人コレクター方において、国外ではロシアの個人コレクター方において作品調査を実施した。 4.期間全体を通して得られた主な新知見を以下に列記する。①これまで不明であった緑山の履歴が、遺族の発見によって明らかになった。②作品所在調査により、現時点で109件の現存を確認した。③制作技法について、X線透過撮影、X線CTスキャナ撮影、蛍光X線分析などの光学的調査を実施した結果、作品の構造や彩色材料などが一部解明された。これらの知見を「牙彫師・安藤緑山の研究」(『國華』第1491号)としてまとめた。
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Research Products
(1 results)