2018 Fiscal Year Research-status Report
革命前ロシアにおける娯楽文化としての中小音楽劇場―上演演目・批評・受容の研究
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17K02350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 恵美子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30648655)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルセニー・コレシチェンコ / 後期ロマン派 / マリウス・プティパ / 魔法の鏡 / セルゲイ・ラフマニノフ / 帝室劇場 / キュイ / バレエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、今日世界中で上演されるクラシック・バレエの主要な作品を振付けたバレエ・マスター(バレエ団のトップ、総監督)のマリウス・プティパの生誕200周年にあたり、国内外で多くの関連行事があった。筆者もモスクワおよびサンクトペテルブルクで行われた国際学会に参加して、日本のバレエ発展と亡命ロシア人との深い関わりについて報告した。この成果は同学会の報告集に掲載された。また、SLAVISTIKA誌上にも加筆修正したものが掲載された。上述のロシアでの国際学会では、チャイコフスキーの研究で世界的に有名な音楽学者のRoland John Wiley、バレエおよびプロコフィエフ研究などで著名なSimon Morrison、ロンドンのヴィクトリア・アルバート博物館の学芸員で2010年に同館で行われたバレエ・リュス初公演100周年記念の展覧会で中心的な役割を務めたJane Pritchardらに多くの知己を得ることができた。また、この際に知り合った英国の著名ジャーナリストでマリウス・プティパの伝記を著したNadine Meisnerとは、2019年6月に東京で開催される第10回スラヴ・ユーラシア研究東アジア大会でパネルを組み、共同で研究発表を行なう予定である。 このほかに、インターネットラジオOTTAVAに出演して、前年度に出版したセルゲイ・ラフマニノフについての回想集やロシア・バレエについて解説を行なった。また、OTTAVAが主催するサロン・コンサートで、マリウス・プティパが最後に創ったが「失敗作」として抹殺されてしまったバレエ《魔法の鏡》を、レクチャー+ピアノ+影絵で再現するというコンサートを企画・実行した。同コンサートでは、アルセニー・コレシチェンコというラフマニノフと同時代の後期ロマン派の知らざれる作曲家のバレエ音楽を紹介するという世界的に見ても非常に珍しい、大変貴重な試みを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】で記したように、2018年はバレエ史上最も重要と言っても過言ではないバレエ・マスターのマリウス・プティパの生誕200周年にあたり、様々な関連行事があり、資料や情報取集にまたと無い機会が多かったため、研究の主軸がややバレエ寄りになってしまった。とはいえ、特に舞踊の実態がよくわからない革命前のバレエは音楽が非常に重要であり、《魔法の鏡》を作曲したアルセニー・コレシチェンコ、チェーザレ・プーニ、レオン・ミンクスなどのバレエ音楽作曲家、また五人組の作曲家セザール(ツェーザリ)・キュイの没後100周年にもあたり招待講演を行なったことで、これらの音楽家たちの研究に一定の進捗があった。 また、「研究発表」には含めていないものの、3月30日にもう一つのコンサートを企画・実行して、そこではバッハがその形式を確立した「24の前奏曲とフーガ」を、19世紀から20世紀のロシアの作曲家によって復活させた系譜をたどった。特によく知られるショスタコーヴィチ以前にこの形式を復活させたフセヴォロド・ザデラツキーは、皇帝の家族の家庭教師を務めたという経歴のせいか、ソ連時代に迫害されて、作品の世界初演は2015年という稀有な作曲家である。このザデラツキーに光を当て、一般向けのコンサートを行ったことで、《魔法の鏡》コンサートも合わせて、研究成果の還元ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のマリウス・プティパ生誕200周年を機に、プティパの日記の新しい解説付きの新版、ニコライ二世の愛人としても知られる有名バレリーナ、マチルダ・クシェシンスカヤの日記等、新しい資料が数多く出版された。これらの資料整理を進めつつ、成果をまとめ出版や学会発表、一般向けの報告を行なっていきたい。そのため、バレエの比重が増加するかもしれない。また、所属しているオペラ学研究会のメンバーとともに、自分はロシアを担当しつつ、ヨーロッパ全体の音楽文化の伝播や変遷に目を向けているため、研究対象の範囲がやや広がっている。
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Causes of Carryover |
本年度末までに研究成果を書籍として出版する見込みだったが、校正に時間がかかったこと、また内容においてバレエの比重を増やしたため、出版予定が2019年度にずれ込んだ。この分は、2019年度の出版に関わる費用として使用する。2019年度の助成金は、主に出版、学会発表等、成果報告に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)