2019 Fiscal Year Research-status Report
Mapping the Olfactory: Modernist Representation of Body and the City in Early 20th-Century England
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17K02388
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (50434569)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 嗅覚の表象 / イギリス・モダニズム / 身体の表象 / 都市とにおい / 戦争と嗅覚 / モダニズム文学 / ヴァージニア・ウルフ / 都市と消費文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、以下の主に3点について研究を進めた。①これまでの芳香の表象を中心とした調査から、モダニストが表象する田園空間および都市空間幻想と悪臭の表象への調査へと移行した。②都市空間、におい、そしてモダニズムとの相互関係について、消費者文化の観点、そして女性とジェンダーの観点から考察した。③感覚とモダニズムについての最近の批評文献調査の結果から、最新の感覚批評の動向を分析し、本研究の位置付けを検討した。その結果以下の研究実績を得た。 本研究前半における集大成でもあり、上記①を検討した論文、「表象される嗅覚の地図―ヴァージニア・ウルフにおける身体と空間の想像的構築をめぐって」をイギリス女性史研究会編集委員会の示唆に基づき、嗅覚の研究史とジェンダー的側面から再検討、修正を行い雑誌論文として発表した。 ②に関しては、フランス、ロレーヌ大学における、Recycling Woolf:International Conferenceにおいて、“Virginia Woolf Promoting Shopping: A Japanese Leading Department Store, PARCO, and its Advertisement in 1996”と題する研究発表を行い、記憶、においの消費文化とイギリスモダニズムの関係を一部含む考察について、意見交換を行った。本論は上記学会編集の論集に選考され、編集委員会の意見を踏まえて現在出版に向けて修正中である。 ③の文献調査は、本研究後半をまとめる論文中における、20世紀初頭のモダニズム期から第一次大戦を経て消費文化が新たな側面を迎える時代の嗅覚の分析に批評的観点をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の怪我、さらに国内外における新型コロナウイルス感染による影響のため、イギリス現地における調査実施が叶わず資料不足であることが、進捗状況が遅れ気味であることの大きな要因である。新しく現地調査すべき第一次資料を調査出来ない状態である。他方、研究期間前半の2年間の調査を論文として1件出版(2017年度成果、モダニズム文学と嗅覚について)、1件選考後修正中(2018年度-2019年度成果、モダニズム、消費文化と嗅覚について)、1件投稿審査中(2019年度成果、モダニズム文学、感覚麻痺と無意識について)、現在論文執筆中(デパートとにおいの文化の関係を含む、20世紀初頭イギリスモダニズムの現代消費文化への影響について)といった、執筆作業は進んでおり、これまでの研究を公表するための準備は徐々に整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査に関しては、今後の国際的な状況により、不可能となる可能性を考慮して、以下のように推進する。(1)電子データベース(Modernist Journals Projectなど)を主な研究資料とする。(2)国内でも入手可能な本課題に関する最新の研究資料を調査し、研究成果に加える。 2020年度における、国内での調査おいては、知覚現象に特化したディスコースを生み出したポストモダニズム批評・哲学を批評的基礎とし、19世紀以来の嗅覚的表象の研究史を整理する。文字および視覚的テクストに表象されるモダニズム的身体の解読をモダニズム時代の嗅覚的表象の批評の礎とする。さらに嗅覚をテーマにしたヨーロッパの現代文学作品を分析し、進化し続ける嗅覚と身体の関係を考察する。研究史に戻り、これまでの研究の意義を位置づけ、過去の嗅覚研究に付与された社会やジェンダーに対する考え方と対比させて、モダニズムの嗅覚の取り扱いを評価する。 海外調査が可能になった場合は、2019年度未調査の以下の項目について、イギリスの図書館、文書館(British Library,Senate House Libraries,The Mass Observation Archive,Sussex University)において調査の予定である。 (1)19世紀末から20世紀初頭にかけて、汚水溜めが保持されたロンドン近郊のクロイドンの事例を調査し、モダニズムにおける都市空間幻想と悪臭の表象について考察する。 (2)20世紀初頭以降における、悪臭と階級および悪臭の個人化の問題、そして第一次大戦と嗅覚との関わりを、悪臭払拭のための取り組みや消費文化の表象に探り、モダニズム芸術との関連を分析する。
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Causes of Carryover |
本年度は諸事情により海外調査が不可能になったため、調査旅費分が未使用となった。また、研究図書費の差額としても未使用分が生じた。次年度使用額については、海外調査費用もしくは、海外調査が不可能な場合は研究図書費として利用する予定である。
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