2020 Fiscal Year Research-status Report
Mapping the Olfactory: Modernist Representation of Body and the City in Early 20th-Century England
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17K02388
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (50434569)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 嗅覚の表象 / イギリス・モダニズム / 身体の表象 / 都市とにおい / 消費文化とにおい / モダニズム文学 / 戦争と嗅覚 / ヴァージニア・ウルフ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は主に以下の3点について研究を進めた。①モダニズム期消費文化と嗅覚との関係をイギリス、フランスにおけるデパート文化とモダニズム文学作品内における商業施設内での嗅覚表象から分析し、日本におけるショッピング文化とイギリスモダニズムの親和性についても調査した。②モダニスト文学における、無感覚、あるいは感覚の麻痺に着目し、イギリスと植民地的外国という空間、ひいては文明と野蛮といった二項対立的空間を経験するモダニズム文学作品内の女性の内面分析により、敢えて表面化された無感覚性の表現の意図を探った。③モダニストの都市空間幻想と嗅覚の表象との相互関係を、電子データベース、Modernist Journals Project、および20世紀初頭モダニズム文学テキスト中に探索した。モダニストの想像力における都市空間と嗅覚や感覚全般を関連付ける事例を調査し検討した。 その結果以下の研究実績を得た。上記①の研究成果の一部を検討した論文、「リサイクルされるヴァージニア・ウルフ-山口はるみと一九九〇年代PARCOのコピー-」を学術雑誌論文として発表した。本論は2019年、Recycling Woolf: International Conference (フランス・ロレーヌ大学)にて行った研究発表に、本学会編集の論集編集委員会の意見を踏まえて修正を行い日本語で執筆したものである。 ②に関しては、「解釈されえぬ沈黙-The Voyage Outにおける文明、無意識、そして女性―」として、学術雑誌へ投稿し査読を得て修正中である。 ③に関しては、モダニズム期の各種ジャーナルを執筆した幅広い階層が表現する嗅覚を含む感覚に注目し、そうした感覚が織り成すテキスト表象と都市空間との関係を分析し、調査結果をまとめ、学会発表に応募する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においては、国内外の新型コロナウイルス感染症による影響のため、イギリス現地における調査実施が叶わず、資料不足であったこと、また2020年度における遠隔授業立ち上げにあたり、大学内本務として授業支援や教育業務のオンライン化に対応するため、研究時間が大幅に不足したことが進捗状況の遅れを招いた。 そうした中ではあったが、研究期間中期における研究成果をまとめた論文が1件(2018-2019年度成果、デパートとにおいの文化の関係を含む、20世紀初頭イギリスモダニズムの現代消費文化への影響について)学術誌に掲載された。本論文に関しては本研究課題の研究目的を踏まえ、コロナ禍でも国内調査が可能な第一次資料と観点を取り入れた。他、学術雑誌論文(モダニズム文学、感覚麻痺と無意識について)が1件査読後修正中といった状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度に当たる本年度においては、これまでの研究の統合を図り、研究業績の出版による公表に向けて執筆、調整を行う。 海外調査が可能になった場合には、2020年度予定であった以下の項目について、イギリスの図書館、文書館(British Library, Senate House Libraries, The Mass Observation Archive(Sussex University))において調査の予定である。 (1)19世紀末から20世紀初頭にかけて、汚水溜めが保持されたロンドン近郊のクロイドンの事例を文献調査し、モダニズムにおける都市空間幻想と悪臭の表象について考察する。 (2)20世紀初頭以降における、悪臭と階級および悪臭の個人化の問題、そして第一次世界大戦と悪臭とのかかわりを、悪臭払拭の取り組みや消費文化の表象に探り、モダニズム芸術との関連を分析する。 不可能となった場合は、可能な限り文献を取り寄せることにより上記(1),(2)の点について考察を進めるが、特に(1)に関しては、現地調査による第一次資料収集無しでは、分析が難しいため、アクセス可能なデータベースが存在しない場合は、(2)の項目についての調査を中心に行い、日本国内において調査できる観点に絞って、研究成果を執筆する。
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Causes of Carryover |
【理由】国内外における新型コロナウイルス感染症蔓延により、現地調査を見合わせたため、主に旅費用予算が未使用となったことによる。また、コロナ禍の大学オンライン授業準備、対応などのため研究時間の確保が難しく、十分な文献調査に至らなかった。 【使用計画】「8.今後の研究の推進方策」に従い、海外調査費として使用する。海外調査が不可能な場合は、研究図書費として利用する予定である。
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