2018 Fiscal Year Research-status Report
郷土史料を活用した戦国大名文芸の注釈と研究―上杉氏・武田氏を中心に
Project/Area Number |
17K02424
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30295117)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 和漢聯句 / 太原崇孚 / 今川義元 / 韻類書 / 大名 / 蔵書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、戦国大名の愛好した重要な文芸でありながら、これまでほとんど研究されて来なかった和漢聯句について集中的に研究した。その成果として、「戦国大名と和漢聯句─駿河今川氏を中心にして」が国語国文(京都大学文学部国語学国文学研究室)に掲載された(7月)。さらにこれを踏まえて、「今川文化の歴史的意義-和漢聯句を視座として」を執筆した(近刊)。これらの成果によって、和漢聯句がいかに大名に浸透していたかが判明した。その前提としては京都の幕府・公家・五山との交流が指摘されて来たが、加えて妙心寺派禅僧の東国への教線伸長があることを論じた。そして今川氏の場合は義元の軍師とされる太原崇孚(九英承菊)の働きが極めて大きかったことも明らかにした。 こうした地方大名の文芸と深く係わる領域として、江戸前期の大名の蔵書と学問の関係についても研究を薦めた。弘前藩津軽家を対象として、「大名の蔵書と学問」と題して講演を行い(11月3日、於弘前大学)、津軽家蔵書である「奥文庫」印を持つ古典籍を弘前市立図書館などで閲覧調査し、成果を「大名の蔵書と学問-津軽信政の蔵書目録をめぐって」としてまとめた(近刊)。さらに和漢聯句と深く係わる、日本における漢学と韻類書との関係を、博士家の改元記から探った、「迎陽記の改元記事について」を執筆した(近刊)。また同じく宋末元初に刊行された詩話・詩集の、日本への受容と利用の実態を探って、「頓阿句題百首の源泉」と題して発表した(3月3日、国際日本文化研究センター共同研究シンポジウム「室町文化と外縁」、於慶應義塾大学)。 資料調査として、このほか、8月30日-9月1日の日程で、熊本大学附属図書館(永青文庫)・島原市立島原図書館(松平文庫)に訪書し、中世から近世の大名関係の文芸資料の調査研究を行った。また11月7日は備前正宗文庫に訪書した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和漢聯句についての研究を深化させることができ、また近年の歴史学における戦国大名の個別の研究ともリンクしつつあるので、上の自己評価となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の目的である、武田氏・上杉氏に対する研究に着手する用意を進めている。まずは武田晴信主催、積翠寺における天文15年7月26日の世吉和漢聯句の注釈をまとめたい。これは既に礎稿が完成している。ついで直江兼続による天正16年の漢和聯句を取り上げる予定である。
|
Research Products
(6 results)