2017 Fiscal Year Research-status Report
歌舞伎興行と近世期出版商業活動における連動性についての発展的研究
Project/Area Number |
17K02475
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉橋 正恵 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (90425017)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 歌舞伎 / 興行 / 出版 / 浮世絵 / 近世文学 / 情報 / 中村座 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では江戸後期の歌舞伎に着目してその実態を解明すると共に、芸能関係出版物によって形成される出版文化が都市文化へと展開していく様相について具体的な事例を用いて明らかにすることを目的とする。 平成29年度は歌舞伎興行についての実態解明に重点を置いた。具体的には、二回の研究会活動(2017年6月、9月)を通して、江戸三座の一つ中村座の興行記録「中村座日記」に記される記事を追いながら、幕末期から明治初期にかけての上方も含めた歌舞伎やその他の芸能興行の史料と実例を照らし合わせて当時の興行形態について検討を重ねた。 芸能関係出版物については、歌舞伎興行に基づいた役者批評の出版物である役者評判記を翻字した資料集『歌舞伎評判記集成 第三期』第一巻の刊行、及び幕末期に上演直前に中止させられた歌舞伎芝居「花埜嵯峨猫魔稿」の台帳を翻字した資料集『未翻刻戯曲集24 花埜嵯峨猫魔稿』刊行に携わった。これと同時に、役者絵を研究対象とする研究者と共に座談会へ参加し、座談会での内容を歌舞伎学会紀要『歌舞伎研究と批評』59号において公刊し、また雑誌『演劇界』において歌舞伎作品「極付幡随院長兵衛」の作品解説を執筆した。この他、本研究によって得ることができた近世期の歌舞伎興行及び役者、さらに浮世絵出版についての新しい見解をもとにして、書評二点を著すことができた。 こうした研究業績により、近世期の歌舞伎に関する基礎研究を充実させると共に、他の研究者と情報の共有化及び研究成果の一般への普及を図ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歌舞伎興行の実態解明についての研究は、研究会活動を通して計画通りに進んでいる。しかし、本研究を進めるにあたって基本史料となる『中村座日記』の資料集刊行準備が当初の予定よりも少し遅れている。というのも、資料集刊行に向けて原稿を確定させるための第二段階翻字作業が、予定よりもやや遅れているからである。この遅れの主な原因は、資料集の編集方針が未だに確定していないことに大きな要因と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前記のとおり、興行形態解明についての研究は予定通り進んでいるものの、『中村座日記』の資料集刊行準備は少し遅れていることが否めない。今後は資料集の編集方針を早急に確定し、より正確なものを目指しての翻字作業へ取りかかることが必要であると考えている。 また、当初予定していたボストン美術館(アメリカ合衆国)所蔵の番付を中心とする歌舞伎上演資料調査についても未調査資料が少なくとも二・三百点は残されているため、これら上演資料の調査が早急に必要である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた海外研究調査(アメリカ合衆国、ボストン美術館)を、当該予算で実施しなかったことが大きな要因となっている。加えて、データ入力の謝金として計上していた予算についても、29年度はデータ入力作業自体を翌年に見送ったことによって使用計画と差が生じた。 これら予算金額については、翌30年度にボストン美術館研究調査旅費及びデータ入力謝金として使用する予定である。
|