2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Rhetoric of Physicality and Rebellion in English Romanticism
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17K02502
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
後藤 美映 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20243850)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス文学 / 身体性 / 医科学 / 趣味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、これまでの研究を具体的にまとめ、次の二点を中心に口頭発表や論文の発行を行いその成果とした。まず、一点目は、19世紀初頭に活躍し、解剖学と生理学の発展に寄与したAstley CooperやJohn Hunterらの講義録等を考察し、当時の医科学的身体論の概要を明らかにした。その結果、当時の医科学に基づく身体像として、特に身体の部位が神経と脳によって、全体として呼応し、調和するという循環的な身体像を見出した。この革新的な身体像は、ニュートン的な機械の身体像を超えるロマン主義的、有機的身体といえる。そして、こうした医科学的言説は、ジョン・キーツの詩作を中心に、ウィリアム・ワーズワスやサミュエル・テイラー・コールリッジらの詩や散文において、表象的に援用されていることを考察した。さらに、このような医科学と詩の言語との密接な関連に基づく新しい身体像は、自由主義的な知の循環やネットワークを信奉するロマン派詩人らの哲学とも通底している可能性を示唆した。特にリイ・ハントら第二世代の詩人達によって、普遍の善として、また社会改革の根本として捉えられた18世紀的理性主義が、地政学的空間における知の自由な循環を志向するという点において、身体空間の中の循環と共に、社会改革のための新たなヴィジョンを内包しているという可能性を明らかにした。 二点目としては、身体性という概念を明らかにするために、医科学という観点とともに、18世紀から興隆し、19世紀初頭のロマン主義の時代にまで影響を及ぼした趣味論という美学的、哲学的観点からも研究を行った。特に、詩作において求められた正統なる「趣味」という美学概念を侵犯し、直截な身体性を保持する「味覚」という感覚に基づく詩作の創造性とその革新性を明らかにした。
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