2017 Fiscal Year Research-status Report
The Dissemination of Knowledge: Encyclopedias in the Middle Ages
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17K02522
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大沼 由布 同志社大学, 文学部, 准教授 (10546667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 由里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (20251390)
黒川 正剛 太成学院大学, 人間学部, 教授 (30342231)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 百科事典 / 古典の受容 / 中東とヨーロッパの交流 / 博物誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、博物誌・百科事典の本文を比較・分析することにより、動物・植物・鉱物等についての博物学的記述が、古代ギリシア・ローマから、イングランドを初め、フランスやドイツ等のヨーロッパ中世に、どのように受け継がれていったかを分析する。さらに、ヨーロッパ中世の博物学的知識が、どのように中世イスラーム世界からの影響を受けたか、また、どのように近世ヨーロッパへとつながっていったかをあわせて考察する。そして、それらを通し、時代や地域を限定した局地的な知のあり方ではなく、古代から中近世ヨーロッパという時代的な広がりや、ヨーロッパと中東という地域的広がりをカバーし、当時の知識のあり方を総合的に浮かび上がらせることを目的とする。 本年度は、西洋の古代中世近世、イスラーム中世の百科事典や博物誌の分類と枠組みとを確認し、今後の具体例検討の共通基盤とした。西洋古代及び中世を大沼、西洋近世を黒川、イスラーム中世を山中が担当し、それぞれの担当する地域と時代における代表的な資料を数例取り上げて分析した。編纂意図としては、大きく分けて、自然界を知ることと、神への理解を深めることの二つが見られ、時代や地域によってそれらの比重の変化が見られた。また、典拠の扱いや記述の方法についても同様である。分類と枠組みに関しては、個々の作品による差が予想より大きかった一方、時代を超えた意外な共通点もあり、年度末に行った打ち合わせの結果、分類に関する新たな発見数点を、年度をまたいで、さらなる分析の対象とすることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた年度初めの打ち合わせは、三者の予定が合わず、メールでやりとりの上、各自担当地域と時代の文献にあたることとなったが、それぞれに成果を発信し、問題なく進めることが出来た。年度末に総括としての打ち合わせを行い、来年度の研究計画についても相談した。また、最終的な成果のまとめとして、国際学会を開催して発信するという形で合意し、国立民族学博物館で2019年度に行われる予定の展示に、本研究の一部を反映させる可能性についても話し合った。 研究成果のうち、本研究と特に関連が深いものとしては、12月に大沼の行った学会発表があり、そこでは、西洋の古代から中世における百科事典の編纂意図や執筆方法の移り変わりを検証した。研究のさらなる発展に関する助言や情報も受けることが出来た。それ以外に特筆すべきこととしては、7月に大沼が発表した国際学会や11月に山中が発表した国際学会(大沼も聴衆として参加)などにおいて、関心を同じくする海外の研究者たちに会い、今後の共同研究や国際学会の共催へ向けて話を進められたことである。すでにフランスの研究者たちと、2020年を目処に国際学会共催へむけて動いている。 以上を総括し、細部での変更や延期はあるものの、おおむね当初たてた研究計画の通り(一部はそれ以上とも言える形で)進んでおり、全体としては、順調と言って良いと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目である2018年度より、百科事典・博物誌の具体例の記述の比較に入る。中でも、2018年度は「動物」に関する記述を中心に分析する。なお、ここには、現存する動物に限らず、幻獣や怪物等想像上の生物も含む。2017年度末の打ち合わせにより、特に重点的に調べる「動物」の記述は決定済みなため、それらを中心に調査を進める。成果を報告する機会としては、9月に前年度からの持ち越しである、分類についての新たな発見も含め、他の研究プロジェクトと関連させて研究発表会を行うこととしている。また、前年度の国際学会発表に基づいた論文を国際共著論文として発表する方向でも進めている。年度末には、再度メンバーで集まり、成果報告をし、来年度へ向けての課題なども確認する予定である。
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Causes of Carryover |
5万円程度の次年度使用額が生じた。これは主に、研究分担者が、他の研究課題が大詰めを迎えたため、予定していた、本研究関連の出張による文献調査を延期したことに由来する。延期した調査は、次年度内に改めて行う予定であるため、旅費に充てる額が当初の予定より差額の分増額となる。大きな変更ではないため、それ以外は当初の予定通り進めるつもりでいる。 おもな出費は消耗品費、具体的には書籍の購入にあてられている。また、大学が導入していないラテン語のオンラインデータベースを使用し、記述例を集める必要があるので、そのデータベースの個人使用料(研究代表者分のみ)を支出する必要がある。それ以外には、英語論文の校正を、校閲を本業とするものに依頼する必要がある。
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Remarks |
山中由里子「<自然>の内と外」『民博通信』160号、24-25頁 黒川正剛「想像界の生物相―ハイブリッドな悪魔」『月刊みんぱく』(国立民族学博物館)、2017年11月号、14-15頁
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