2018 Fiscal Year Research-status Report
書き換える女たち:キャサリン・フィリップスとアフラ・ベーンによるキャノン書き換え
Project/Area Number |
17K02526
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
竹山 友子 関西学院大学, 文学部, 教授 (90462142)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英詩 / 17世紀 / 女性作家 / キャサリン・フィリップス / ジョン・ダン / マーガレット・キャヴェンディッシュ / エミリア・ラニヤー / エイブラハム・カウリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は17世紀イングランドの女性作家キャサリン・フィリップスとアフラ・ベーンによるホラティウスなどの古典作品や、ジョン・ダン、エイブラハム・カウリーなど同時代に読まれた作品を含むキャノン(権威的作品)の書き換え作業、特にジェンダーを意識した書き換え作業に焦点を当てる。 2018年度は研究実施計画に従って前半はフィリップスの研究を中心に、フィリップスの作品に見られるジョン・ダンの奇想の影響を考察する研究発表“‘[A] Lady' above the Sun: Katherine Philips's Dexterous Use of the Images of Donne’s Songs and Sonnets”を、アメリカで開催された2018 Sixteenth Century Society and Conference で行った。フィリップスとダンの詩に見られる太陽の表象を中心に類似点と相違点を分析し、太陽の支配を試みながらその支配から抜け出させない異性愛を描写するダンの奇想を利用して、太陽を超越する女性を描写することで女性同士の友愛が異性愛を超越するさまをフィリップスが描写していることを明らかにした。海外の研究者から貴重な質問をいくつかいただくことができ、今後の研究方針に重要な役割を果たすものとなった。 後半には、エミリア・ラニヤー、エイブラハム・カウリー、マーガレット・キャヴェンディッシュの作品における樹木の擬人性をジェンダーの視点から考察して発表した内容をさらに発展させ、新たに論文を執筆して来年度出版予定の論集に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は計画に従って国際学会発表と論文発表に向けた取り組みおよびベーンに関する新規研究に着手した。発表に関しては以前から取り組んできた本研究テーマとなっている女性作家フィリップスによるキャノンの書き換え作業に関する研究のおよそ3分の2ほどを終了した段階である。フィリップスとダンの影響関係の研究に加えて、イングランドにおける女性作家の先駆者の一人であるラニヤーの詩集、フィリップスと同時代人キャヴェンディッシュの詩集、キャノンの一つであるカウリーの作品における樹木の擬人性を考察したものをまとめ上げた。この内容は本研究テーマであるフィリップスを中心としてその先駆者となる17世紀初期のラニヤー、同時代人キャヴェンディッシュ、そして同じく研究テーマである17世紀後期のベーンへと、17世紀の女性作家によるキャノン書き換え作業の研究を一連の流れとして考察するためのものである。 また、本研究テーマであるアフラ・ベーンの作品についてはシェイクスピア作品との類似性を考察する研究に着手した。この研究はまだ初期の段階であるが、フィリップスとベーンの作品の連続性を考察する上で重要な役割を果たすものである。 全体としての進捗状況は5割から6割程度で、当初計画よりやや遅れている。具体的には当初計画していた2018年度内での論文発表ができなかったこと、新規研究への着手が遅れたことである。理由は複数親族の事故入院によるもので入院期間分(約3か月)研究を中止せざるを得ない状況となったためである。予定していた投稿先への論文投稿が間に合わず投稿先を来年度発行予定の論集へと切り替える結果となった。また、アフラ・ベーンに関する研究着手も同様に遅れを生じることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はアフラ・ベーンの詩とシェイクスピアの詩との類似性の研究とともに、ベーンが翻訳したカウリーのラテン語詩 Plantarum libri sex (The Six Books of Plants) の第5巻 The Treeにおける樹木の描写を中心にウェルギリウスやプリニウスとの比較も含めて考察する。ロチェスター伯爵やロバート・ヘリックなどとの比較も取り入れながら、ベーンによる翻訳詩、翻案詩も含めた詩作品におけるジェンダーを意識した書き換え作業を考察する。 同時にカウリーの著作とフィリップスの詩における共鳴関係、カウリーのラテン語作品とベーンの翻訳作品における比較考察についても研究を進めているところである。 最終的にはフィリップスとベーンの女性作家としての書き換え作業の共通項を先述したラニヤーやキャヴェンディッシュなども含めたうえでまとめ、17世紀イングランドの女性作家によるキャノン書き換え作業が一連の流れとなっていることを発表したい。
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Causes of Carryover |
年度内に注文した洋書が届かなかったため未使用額が発生した。当該洋書の購入費用に充てる。
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Research Products
(1 results)