2020 Fiscal Year Research-status Report
The interrelationship between the patriotic consciousness and the reconstruction of indigenous language and culture in Irish literature since the 17th century
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17K02543
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 寛子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90336917)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アイルランド文学 / 英語文学 / アイルランド語文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
土着の伝統の再構築と愛国意識の関連性を分析するにあたり、古期アイルランド語の伝説「スウィーニーの狂気」の翻案作品を網羅的に視野に入れ、これらの読解を進めてきた。2020 年度はとりわけ現代アイルランドを舞台とした作品に集中し、精読した。 アイルランド語をアイルランド人のアイデンティティの要だとはみなしていない作家、Dermot Bolgerも「スウィーニーの狂気」に注目し、伝説を下敷きにした小説A Second Lifeを発表している。Bolger のアイルランド語の伝統への両義的な心境を読み解き、論文を完成させた。Paula Meehanの戯曲Mrs. Sweeneyは、伝説の王Sweeney の妻に光を当てた作品として異彩を放っている。この独創的な劇の分析に基づいた論文をほぼ完成した。さらに、「土着の伝統の変容と愛国意識」という観点に基づいた作品分析、研究成果を集大成し、著書にまとめるための編集作業に入った。現段階では次のような構成を想定し、さらに加筆を続ける予定である。 Introduction: Mad Sweeney, Anti-Hero from Ancient Ireland,1 Sweeney and modern Irish literature, 2 A Submerged Self: Austin Clarke’s ‘The Frenzy of Suibhne', 3‘The black earth my earth-bed’: Mad Sweeney in Exile in Derek Mahon’s The Snow Party, 4 The World Lost and Alive: Sweeney Astray and Seamus Heaney’s Challenge to the Death of Irish, 5 In Search of the Lost Sweeney: Tom MacIntyre’s ‘Sweeney among the Branches', 6 Authority and Resistance in Brian Friel’s Molly Sweeney, 7 Mother to be Grafted: Shadows of Mad Sweeney in Dermot Bolger’s A Second Life, 8 Revolutionising Vulnerable Birds: Metamorphosis of ‘the cursed king’ in Paula Meehan’s Mrs. Sweeney
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度アイルランドに調査滞在し、ダブリン在住のアイルランド語詩人ヌーラ・ニゴーノルとの対談し、ダブリンとアイルランド語使用地区で追加資料の入手を行うはずだったが、新型コロナ蔓延のために渡航できなかった。ダブリンのトリニティ・カレッジ・ダブリン図書館、アイルランド国立図書館、Irish Traditional Music Archiveで入手予定だった資料が関係する部分を除いては、研究の集大成として準備中の著書の執筆は進んでいる。海外調査以外にできることを可能な限り行い、研究は鋭意継続しているため、遅れは最小限に留まっている。2020年度の成果として、2019年3月国際学会の発表原稿を論文として完成し、学会参加者の論文と合わせて論文集を編集して出版することができた(Irish Literature in the British Context)。今は公表予定の成果を整理し、新たに見えてきた課題を次につなぐときである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もしばらくは海外渡航できない可能性を視野に入れ、国内でできることを最大限実行する。著書のための原稿の推敲を進め、本研究における成果を最もよい形で発信できるように準備を進める。現在、土着の伝統の再構築と愛国意識の関連性を20世紀以降の文学作品に探ろうとする本研究の目的に沿って、北アイルランドの詩人デレック・マホンの作品の精読を進め、論文を準備している。マホンはアイルランド語の伝統との接点はないと自覚していたが、それでもスウィーニー伝説に関心を寄せ、これに触発されて数篇の詩を書いていることは注目に値する。この研究成果の報告のために、オンラインでのアイルランド文学国際学会への参加を計画している。(The International Association for the Study of Irish Literatures の年次大会、 ポーランド、Lodz大学、2021年7月19日―23日開催 )本研究成果の一部としてこの学会で予定している発表も著書に組み込む。日本人としての本研究が「アイルランド文学研究」や「アイルランド研究」に留まらない拡がりを潜在させていることについて熟考を重ね、これを言語化することが極めて重要である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のためアイルランドでの調査のための出張ができず、旅費が未消化のまま終わった。このまま海外渡航ができない場合、2021年度は必要図書の購入を検討し、さらにインターネットを通じて可能な調査を継続する。また、オンラインによる学会参加のための原稿執筆、英語で出版を予定している著書の仕上げのために研究費を活用する。
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