2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K02546
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中川 千帆 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70452026)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Identity / Double / Gothic / Crime fiction |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、犯罪推理小説とゴシック小説における家の表象において、どのように自己の概念が描き出されているかを検証するものである。19世紀半ばから20世紀初頭の作品を対象とし、Edgar Allan Poe, John Dickson Carr, Anna Katharine Green, そしてMary Roberts Rinehartを対象とする予定であったが、当初予定していなかったイギリスのカントリーハウス小説やJosephine Teyなどの作家も取り上げることとなっている。 今までのところ、「家と自己」というテーマと犯罪推理小説全般を俯瞰する論文、カントリーハウス小説と犯罪推理小説の関わりを論じる論文を完成させているが、2019年度は、研究の核となる部分を2回の専門的な学会で発表することで発展させることができた。International Crime Fiction Associationで発表した論文は、実話をヒントとした「アイデンティティ詐欺」を取り上げた犯罪小説に注目し、そこで描かれる自己の問題を家との関係や国家の概念から論じた。また、ゴシック小説で扱われるアイデンティティ・自己の問題が犯罪小説の素材となったときに、一つの形としてアイデンティティ詐欺というテーマとなるという連続性をも指摘した。もう一つの発表は、本研究の中核となるEdgar Allan Poeについてのものであり、改めてPoeの作品と批評を確認して、議論を発展させることで研究の全体像を確認することができた。研究の範囲を広げる可能性のある素材を多く見つけることができる1年であったが、これ以上広げることなく、中心部分をより深く切り込むことに今後は集中したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始期の1年の遅れを念頭において、研究計画を変更した結果として、順調に進展している。中核部分まで研究を進めることができた。年度の終わりごろより、新型コロナウィルス感染症対策のため校務が忙しくなり、研究の予定が妨げられることもあったが、今後はその分をも取り返せることを期待したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、7月にInternational Crime Fiction Associationにおいて研究発表を行う予定であった。「家と自己」について、女性作家に関する研究で中核部分をなすAnna Katharine Greenの小説について発表する予定をしていた。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響により、イギリスで開催されるはずであったその学会はキャンセルされたため、今年度の学会発表の予定は未定である。 したがって、今年度は学会発表の予定なしで研究を進める予定である。領域や興味を同じくする学者からのフィードバックが得られないこと以外にも、資料の入手に時間がかかる等さまざまな影響があるため、どのくらい進められるか不安が残るところである。 手元にある資料を元に、今年度は女性作家についての研究をまとめていく予定である。昨年度の研究の過程で新たに発見した作品や作家も本課題に合致する範囲において、研究の対象としていきたい。
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Causes of Carryover |
研究の進行がほぼ1年遅れとなっており、2020年度はほぼ1年分が次年度使用額として残るため。
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