2020 Fiscal Year Research-status Report
語られぬ収容所の集団的記憶を再生する日系アメリカ作家のポスト・メモリーの可能性
Project/Area Number |
17K02562
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
牧野 理英 日本大学, 文理学部, 教授 (10459852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日系アメリカ文学 / 第二次世界大戦 / ポストメモリー / ヒサエ・ヤマモト / ワカコ・ヤマウチ / 敗北 / 日系収容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次世界大戦中強制収容所で過ごした日系アメリカ人を親にもつ作家が、親の語らない収容所の集団的記憶をどのように当時の手紙や写真などで再生し、自身の作品に投射していったかというポスト・メモリ―の過程を考察するというものである。そしてその歴史の再生過程において、日系作家が迫害に対するプロテストとは異なったナラティブを創出していることを証明する。 本年度の成果は翻訳一つ、研究発表1本であった。翻訳はハワイの日系アメリカ作家ジュリエット・S・コーノの詩集 Tsunami Years (1995) の日本語翻訳『ツナミの年』を小鳥遊書房から2020年10月30日に出版した。学会発表は2020年10月24日、上智大学の英文学会の年次大会に慫慂され、シンポジウムで発表した。発表タイトルは”A Unique Historical Resonance Between the Japanese and American Gothic Genres in the Film Adaptation of Koji Suzuki’s The Ring”で、日本の作家鈴木光司の小説『リング』とアメリカのゴシック小説との比較を行った。これは鈴木が1950年代生まれで、ヤマシタ、イシグロとならぶポストメモリーの世代として日本の敗戦をあつかった作家という事実に着目した発表であり、本研究と連関するテーマを提示している。 また日本大学文理学部の出版助成金と、本研究の基盤Cを組み合わせた形で、研究書『抵抗と日系文学:その日系収容と日本の敗北をめぐって』を三修社から11月に発行予定であり、現在下書き原稿は完成。5月連休明けにに入稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染拡大のため、渡航することがかなわず、アメリカ合衆国における大学院図書館での研究が行えなかった。そのため予想した結果を証明することができていない。ただ現在本研究計画は延長を申請し、承認され、来年度において研究成果を上げられるよう最大限の努力をするつもりである。現在国立国会図書館、カリフォルニア、ハワイの博物館、資料館、そしてUCLA の大学院図書館にはマイクロフィッシュ等で文書を送ってもらえるかを問い合わせ中である。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの世界的な拡大により、海外研究を行うことができなくなっている。またアメリカ国内では、大学院図書館の利用時間が大幅に制限されてもいる。本研究は第二次世界大戦時の手記や日記、収容所内で回覧された新聞などの内容も含むため、実際に足を運んで書類を賢覧する必要があるが、来年度に関してはアメリカの図書館と連携をして、マイクロフィッシュなどの資料はイーメイルなどで送ってもらえるように手配するようにしている。また学会等はZoom で行うことが可能であるため、対面、渡航を最小限にする形で研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、計画しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院図書館の使用ができなくなってしまったため、次年度使用額が生じた。したがって未使用分の一部は来年度に繰り越すが、他はネットを通して論文、文書等を購入する際の経費、図書代などで使用する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Book] ツナミの年2020
Author(s)
牧野理英
Total Pages
243
Publisher
小鳥遊書房
ISBN
978-4-909812-35-3