2022 Fiscal Year Annual Research Report
Revisiting the Untold Collective Memory of the Internment: Japanese American Writers and their Postmemory
Project/Area Number |
17K02562
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
牧野 理英 日本大学, 文理学部, 教授 (10459852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日系アメリカ文学 / 第二次世界大戦 / 抵抗 / 日系収容 / 日本の敗北 / ポストメモリー / カレン・テイ・ヤマシタ / 小野節子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次世界大戦中強制収容所で過ごした日系アメリカ人を親にもつ作家群が、親の語らない収容所の集団的記憶をどのように当時の手紙や写真などで再生し、自身の作品に投射していったかというポスト・メモリ―の過程を考察するというものである。そしてこれらの作家群が迫害の歴史から逸脱する抵抗言説を形成していることを証明する。 2017年から最終年度である2022年までの基盤Cの研究実績の中で最も重要なものとは、2022年に出版した単著『抵抗と日系文学:日系収容と日本の敗北をめぐって』(三修社)である。これは本科研費と日本大学文理学部の出版助成金によって可能になった成果である。また日系アメリカ作家カレン・テイ・ヤマシタの最新作である『三世と多感』(Sansei and Sensibility)の下訳が完成し、11月に小鳥遊書房から出版予定となっており、これも本科研費の重要な研究成果の一部である。 最終年度はヤマシタの作品を中心に研究を進めた。『三世と多感』には、1940年代の敗戦国から1970年代の経済大国へと急変貌する日本が描かれている。このことに加え、前衛芸術家オノ・ヨーコの妹である小野節子の博士論文にも着目した。本博論には、戦後から急激に変貌する経済大国日本の姿が分析されている。そしてヤマシタと小野の視点は、単に被害意識のみで語ることのできぬ複雑な日系性の諸相を露呈させている点で交錯している。 最終年度の成果は、論文2本(英語と日本語)研究発表2本(日本語)である。英語論文はヤマシタの第一作目『熱帯雨林の彼方へ』(Through the Arc of the Rainforest, 1990) の1990年代の日系表象と贈与論との関係性について、日本語論文は小野節子の博士論文におけるオリエンタリズムに関するものである。
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Research Products
(7 results)