2018 Fiscal Year Research-status Report
アメリカにおける「慰安婦」の記憶表象―小説とモニュメントの考察
Project/Area Number |
17K02563
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
寺澤 由紀子 東京都市大学, 共通教育部, 准教授 (50409439)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 「慰安婦」 / トラウマ / モニュメント / 記憶表象 / ポストメモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「慰安婦」の記憶が、小説やモニュメントといった文化的産物を通して想起される試みや、再現された記憶が個人や社会に与える影響を考察するものである。研究初年度に引き続き、平成30年度も、研究基盤となる「慰安婦」・「慰安婦」像をめぐる文献、トラウマ研究や記憶表象についての文献の整理、収集、分析を行ったほか、ビデオ証言やメモリアルに焦点を充てた新たな文献の考察にも着手した。本年度は、当初予定していた海外での調査を行うことができず、思うような研究成果を出せなかったが、「女たちの戦争と平和資料館」での特別展「日本人「慰安婦」の沈黙」、「朝鮮人「慰安婦」の声をきく」などでの情報収集、後者特別展のオープニングトーク、「慰安婦」をテーマにした韓国映画『雪道』上映会への参加などを通して、少しずつ調査の枠を広げることができた。こうした調査を通して、記憶の(再)構築の過程や、再現された記憶そのものにおいて抑圧・隠ぺいされた記憶を探るにあたり、被害者であるだけでなく加害者としての立場を背負うことで、記憶の抑圧を余儀なくされる者の存在について改めて目を向ける必要性や、モニュメントという言葉も動きもない表象ならびに小説という言葉に満ちた表象と、映画における「言葉」と「動画」を通しての表象のあり方や影響の比較考察を深める必要性を感じ、今後の研究に必要な多くの示唆を得た。また、上記資料館を通して情報収集や、次年度の調査につながるネットワークが広がったことも有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に予定していた調査が実施できず、当初より遅れをとっていたのに加え、本年度は、校務のほか親の介護、死去といった個人的な事情にて、予定していた海外調査を中止せざるを得ない状況となるなど、十分な研究時間が確保できず、満足のいく成果を上げられなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き文献調査を行うほか、延期になっていた、韓国、アメリカでの調査を、夏期、春期にそれぞれ実施する。これらの調査結果や、研究対象の二小説の再検証をまとめ、学会で成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた韓国、アメリカでの調査が実施できず、それに伴い、通訳やデータ処理などの人件費を使用しなかったこと、調査に必要なノートパソコン等を購入しなかったことによる。 次年度には、ノートパソコンやソフト類の購入、韓国およびアメリカへの出張とそれに伴う諸費用、学会への参加費用に使用する予定である。
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