2018 Fiscal Year Research-status Report
海洋国家アメリカの文学的想像力:アメリカン・ルネサンスと日米を結ぶ19世紀の言説
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17K02567
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中西 佳世子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (10524514)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナサニエル・ホーソーン / マシュー・C・ペリー / 日本遠征記 / アフリカ巡航日誌 / 海軍艦上劇 / ミンストレル / 玉蟲左太夫 / 大槻盤渓 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は『海洋国家アメリカの文学的想像力―海軍言説とアンテベラムの作家たちー』(共編著 開文社出版 2018年4月刊行)を出版した。また、ホーソーンの編纂による『アフリカ巡航日誌』の翻訳研究会を開催してきたが、全章の試訳を終え、今後は具体的な出版計画を進めていく。19世紀太平洋のアメリカ海軍の拠点になっていたハワイでの調査を行った。この調査ではミンストレルショー、宣教団の音楽などに関する資料を入手した。また、真珠湾の戦艦ミズーリに展示されている日本降伏調印式で用いられたペリー提督の星条旗などを実地で見聞し、本科研費研究で考察してきた日本開国におけるペリーの文化的演出が、太平洋戦争終結時に再現されたことを確認した。19世紀のアメリカ艦隊におけるミンストレルショーや音楽による文化演出は、『アフリカ巡航日誌』にも見られ、アメリカン・ルネサンス作家が共有した19世紀言説と海洋国家アメリカの文化戦略との関係を考察する本科研費課題の新たな展開を考えるヒントをこの調査で得た。さらに国内調査を宮城県で行った。16世紀に慶長遣欧使節団を派遣した仙台藩は、幕末においては遣米使節団(1860年)の人材を輩出し、また本邦初の『日本遠征記』翻訳を残している。宮城県図書館と仙台市博物館で、『航米録』と『英単語集』(玉蟲左太夫)のマイクロフィルム、『英文翻譯彼理日本紀行 10卷』(大槻文庫)のアーカイブ、大槻盤渓と玉蟲左太夫に関する論文など、日米を繋ぐ19世紀言説を考察する資料を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費の成果物として『海洋国家アメリカの文学的想像力―海軍言説とアンテベラムの作家たち―』を刊行し、一方、共訳を進めてきた『アフリカ巡航日誌』の全体試訳が完了し、訳注や表記統一作業などの段階に入ることができた。またアメリカ艦隊による海外進出の際に艦上劇として行われるミンストレルショーの文化的意義など本研究の新たな方向性へのヒントを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ホーソーン編纂の『アフリカ巡航日誌』の翻訳出版を行うとともに、これまでの調査で得た本研究課題の新たな方向性で研究をすすめるために、資料収集や学会発表などの具体的な方法を検討する。
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