2017 Fiscal Year Research-status Report
Universal Significance of a Novelist from Northern Ireland, George A. Birmingham
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17K02580
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
八幡 雅彦 別府大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50166568)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジョージ・A・バーミンガム / ユーモア / ナショナリズム / ユニオニズム / 第一次世界大戦 / 北アイルランド小説 / グレン・パタソン / 地域性と普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
8月下旬にダブリン大学トリニティ校の古文書研究図書館においてPapers of J.O. Hannayの調査研究を行った。バーミンガムの書簡や定期刊行物への寄稿文を精読することによって、彼のキリスト教信仰に基づいた強い正義感を再確認すると同時に、彼の古典文学に関する造詣の深さを実感した。これらが彼のユーモア小説を、ただ単に軽いお笑いではなく、人間同士の融和を模索する深い意味合いを持ったものに昇華していることを再認識した。"Gossamer" (1912年)は、世界中の国々のつながりとバーミンガムの戦争に対する複雑な思いを表象した小説であり、ジョン・ウィルソン・フォスターやテリー・フィリップス等の著名批評家が高く評価している。しかし同時にこの小説はユーモアが世界平和をもたらすうえでいかに重要かを強調しており、当科研費受給者は、フォスターもフィリップスも見落としている、この小説が訴えるユーモアの意義に関して日本アイルランド協会学術誌『エール』第37号(2018年3月)に論文発表した。またバーミンガムは第一次世界大戦時にイギリス陸軍に従軍司祭として随行し、その時の体験医に基づいて回想録 "A Padre in France"(1918年)と短篇小説集 "Our Casualty"(1919年)を発表した。 "Gossamer" 同様、両作品とも、「絶望の中のユーモア」が人間が有意義な人生を送るうえで不可欠な心の持ち方であることを示唆している。このことに関しても同じ論文の中で呈示した。8月下旬にアイルランドを訪れた時には、北アイルランドの現代小説家であるグレン・パタソンとディアドレ・マドンにも会い、議論・質疑応答を行い彼らの小説に関する理解を深めた。彼らの小説も、人間同士の対立と融和の描写を通して、バーミンガムの小説同様、普遍的な訴えかけを持っていることを解明し、学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の目標は、8月下旬のアイルランドでの研究調査を経て、10月の国際アイルランド文学協会大会でパタソンの小説に関する研究発表を行うこと、日本アイルランド協会学術誌『エール』にバーミンガムのノンフィクション作品と小説に関する論文を書くことであった。その両方ともを予定通りに実施できたので、研究はおおむね順調に伸展していると評価する。当初予期していないことが考えられるとすれば、大学内の研究以外の業務、大学外の義務が年々忙しくなっているので、それらによって研究に支障がきたされることである。その時に備えて、現在も研究は空き時間を有効に活用して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の計画は、まず昨年度同様、8月下旬にダブリン大学トリニティ校において"Papers of J.O. Hannayの調査研究を行う。本年度に追究すべきことは、バーミンガムの書簡、定期刊行物への寄稿文及び彼が著した神学書の精読を通して、彼のキリスト教との関わりをさらに明らかにすることである。なぜならばそれが、「絶望の中のユーモア」というべき、バーミンガムの説得力に富んだユーモアを形作っているからである。もう一つの計画は、バーミンガムの短篇小説の中から、特に彼の神髄を現していると思われる7つの作品を翻訳出版し、彼の作品の普遍的な意義を広く一般に伝える。またバーミンガムは100冊近い小説、演劇、随筆、神学書を出版した多作な作家であり、今後3、4年のうちにはこれらをすべて読み終え、当科研費受給者が開設しているバーミンガムのホームページ上でそれらの概要を紹介する。そのことによってバーミンガムの作品を一般に紹介すると同時に自身の今後の研究に役立て、数年先に出版を計画しているバーミンガムに関する研究書につながるようにする。バーミンガムの作品を読みながら実感していることは、彼は政治小説、ユーモア小説、ミステリー小説と幅広いジャンルの作品を書いており、彼は決して世間で評価されているような軽いユーモア作家ではなく、人間の本性を見抜くのに優れた作家であるということだ。バーミンガムはまた、シェイクスピア、ミルトン、ベーコン、ワーズワース、ディケンズ等、数多くの古典に造詣が深く、これらの文人に関する知識が彼の数多くの小説の中にちりばめられており、価値を高めている。以上のようなことをバーミンガムの研究書の中で解明する。そのためには自身がそれら古典作家の作品を読む必要がある。そしてバーミンガムと共通項の多いグレン・パタソン、ディアドレ・マドゥン等の現代北アイルランド小説家の研究も続ける。
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Causes of Carryover |
3月にホームページ(http://geo-birmin.com)の更新に着手した。バーミンガムの5つの小説の内容を日本文、英文で追加する予定である。この完成が年をまたいだために業者への支払が平成30年度となった。
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Remarks |
ジョージ・A・バーミンガムの略歴、作品、参考文献、文献所在地を日本語と英語で紹介している。
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