2019 Fiscal Year Research-status Report
アルヌール・グレバン作『受難の聖史劇』における韻文構造上の諸原理の継承と発展
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17K02583
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70569904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏文学 / 文献学 / 演劇学 / 詩作技巧 / 写本学 / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、グレバン作『受難の聖史劇』諸写本の転写チェック(A・B写本)、加えて『アラス受難劇』の転写の再チェックを行った。その成果を踏まえ、当初の研究課題の検証目的であるグレバンの聖史劇と『アラス受難劇』の韻文構築原理における違いを、孤立詩行や欄外記述、作品成立・伝承過程などから検討した。その成果を9月に東京で開催された国際シンポジウムで発表し、『受難の聖史劇』の中世・ルネサンス演劇史上における位置づけを、国内外の演劇研究者と共有することができた。さらに本年度中に進めた諸写本の転写チェックの結果を、海外媒体に提出済みであった『受難の聖史劇』中の諸写本におけるロンドーの使用についての論文に反映させることができた。これらの発表・執筆により、『受難の聖史劇』がその前後の演劇作品に対して傑出していた点を、これまでにない広い範囲の写本調査に基づきつつ、韻文構造の検討を通して明らかにすることができた。 さらに副次的テーマである日本における中世フランス文学の紹介については、日本のフランス中世文学研究の先駆者であり、中世演劇研究にも足跡を残した坂丈緒の事績について、調査を深めることができた。こちらのテーマについては、海外媒体での論文発表および海外での研究発表を行い、彼が「中世フランス」を表現するための日本語を同時代の日本社会を背景としながら模索した有様について、従来よりも詳細に検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた海外研究者の招へいなどが出来なくなり、そのため補助期間を延長することになった。とはいえ写本の転写やそのチェックなどについては確実な進展がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長が認められたことを契機として、写本の転写チェック(E・F・K写本)を進め、『受難の聖史劇』の作品伝承と韻文構成の関係についての考察をより深めたい。また研究者の招へい、論文執筆や研究発表を通じ、本研究課題を通して得られた知見を国内外の諸研究者と共有していきたい。
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Causes of Carryover |
新形コロナウィルスの感染拡大に伴い海外研究者の招へいが出来なくなり、次年度使用額が生じた。こちらは令和2年度に海外研究者の招へい、あるいは研究代表者の海外調査などに充てたい。
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