2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02585
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日向 太郎 (園田太郎) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40572904)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プロペルティウス / ペトラルカ / 恋愛詩 / ホメロスの伝承 / 古典学の受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年6月、イタリアのフリウーリ州のサン・ダニエーレ市において、同市のグアルネリアーナ図書館(Bibiloteca Guarneriana)の主催するサマースクール(ウディネ大学、トリエステ大学、オハイオ大学、東京大学が参加)から参加招聘を受けた。同図書館は15世紀の人文主義者の豊富な蔵書(その多くは手写本)を所蔵している。この蔵書を活用して、大学院生向けに毎年ラテン語文献学・写本学にかかわる研究と講習を行っている。申請者は、「ペトラルカとプロペルティウス(Petrarch and Propertius: An Example of Intertextuality)」という題目で研究発表を行った。これは、前年度に日本西洋古典学会で行った研究発表「プロペルティウスとペトラルカ--2人の恋愛詩人の接点をめぐって」(論文として『西洋古典学研究』第66号 [2018] に掲載)を若干改訂し、英訳したものである。11月には、イタリアのウディネ市の市立図書館において、2016年末に刊行したパウルス・ディアコヌス著『ランゴバルドの歴史』の翻訳書の出版記念講演を行った。その講演原稿を手直ししたものが、同地の学術雑誌Ce Fastu? 44号に掲載された。2018年12月には、ホメロス叙事詩の伝承にかんする古代ギリシア・ローマの作家たちの証言を比較検証し、その伝承形態についての知見をまとめた論文「ペイシストラトスによるホメロス叙事詩の編纂」を所属機関の紀要「言語・情報・テクスト」に発表した。この他、最近10年間の研究を振り返り、その成果をまとめた『憧れのホメロス』の刊行を準備し、知泉書館からの出版が決定した。2019年3月にはピサ大学において、研究発表(Conversando in spiaggia: Ovidio Ars 2.123-144)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、2018年度の前半期には、前年度日本で発表した研究「プロペルティウスとペトラルカ」を英語で発表する機会に恵まれた。その後Studi Petrarcheschiの編集に携わるMatteo Venier博士やGino Belloni教授から、研究上の有益なアドヴァイスを得ることもできた。上記の『憧れのホメロス』の刊行にも生かすこともできると思われる。また、かねてより準備していたボッカッチョ Boccaccio『名婦伝 De mulieribus claris』の邦訳及び解題については、ひとまずは完成にこぎつけることができた。翻訳作業中、とりわけ解題執筆中に気になったことは、14世紀のイタリアの人文主義者ペトラルカやボッカッチョがどのようにホメロスとめぐり合い、ホメロスを受容したかという問題である。このテーマに即した研究にも興味を抱いているが、今のところあまり進展していない。もう50年以上前にAgostino Petrusiによって上梓された大著Leonzio Pilato fra Petrarca e Boccaccio, Venezia-Roma 1964で扱われていることに、何を付け加えることができるか模索中である。何はともあれ、ホメロス学は、西洋古典学研究の要であるから、継続したい。上に挙げた「ペイシストラトスによるホメロス叙事詩の編纂」は、その端緒となるものであろうから、このテーマに関しても足掛かりを作ったものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年7月にも、申請者は上述グアルネリアーナ図書館主催のサマースクールに招聘されている。発表テーマは、「プロペルティウス写本における歌の区分」であり、ルネサンス期のプロペルティウス写本においてしばしば区分の目印を欠いてひとつながりの詩歌として伝わっている複数の個別の詩歌が、16世紀以降の印刷本においてどのような経緯や考えに基づいて区分され、個別の詩歌として扱われるようになったかを概観する。とくに、具体的事例としてプロペルティウス第2巻第32歌とその直前にある第31歌の個別性(それぞれの歌としての独立性、まとまり)を検証することになるだろう。第31歌は、ほぼ全体がアポッロ神殿の描写になっており、この造形芸術作品描写の機能についての論文を年度内に刊行することが目標である。また、今秋締め切り予定である所属機関の紀要に、ホメロス作品における造形芸術作品描写をテーマとした(とりわけ『オデュッセイア』第19巻について)の論文を発表することを考えている。さらには、ボッカッチョ『名婦伝』に含まれているアグッリピナ、ポッペアなどの人物伝を基にして、ボッカッチョとタキトゥス『年代記』との関係について、今年度内に考察をまとめることを目指している。3月にピサで行ったオウィディウス『恋愛術』第2巻にかんする研究発表についても、日本語で論文にまとめ、刊行することを予定している。
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Causes of Carryover |
今年度イタリアに渡航して研究発表をすることが決まっているので、そのための旅費を確保した。
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Research Products
(7 results)