2019 Fiscal Year Research-status Report
Reception and Diffusion of the Japanese Performance of Ancient Greek Drama
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17K02590
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
野津 寛 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (20402092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
納富 信留 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50294848)
吉川 斉 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任研究員 (60773851)
葛西 康徳 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80114437)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ギリシア悲劇 / 能 / 比較文学 / 西洋古典学 / 古代ギリシア演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
吉川(研究分担者)は、調査によって発見した東大ギリシア悲劇研究会の資料について、順次デジタル化を試行しつつ、今後に向けた手法を確立した。また、19世紀以来の欧米人による能受容において重要な役割を果たした E. Fenollosa について、日本における彼と能の関わりを研究した。葛西(研究分担者)は一貫して儀礼論の立場からギリシア悲劇と日本の伝統演劇(能)の受容の問題を追求すると共に、海外の研究協力との共同研究を推進した。野津(研究代表者)は欧米人による能研究のパイオニア N. Peri の研究、能とギリシア悲劇の儀礼的な構造の比較研究、及び宮城聰のアンティゴネー上演に関する研究を行った。2019年3月、野津(研究代表者)はブラウン大学教授 Adele Scafuro 氏(研究協力者)と共に以下の論文を刊行した:"Miyagi’s Antigones, Three Productions: Tokyo 2004, SPAC May 2017, and Avignon July 2017," Studies in Honour of Guido Avezzθ Skenne; Studies I-1, p. 881-922. 葛西と野津は2019年8月オックスフォード大学内の古典学部にて国際シンポジウム "Symposium : Comparative Studies of Drama and Lyric Poetry in Ancient Greece, Rome and Medieval and Modern Japan"を開催した。同シンポジウムの発表題目は以下の通り:1. Y. KASAI, "Why are Japanese Scholars of both Japanese and Western Classical Literature Unable to Pursue Comparative studies?” 2. Vanessa CAZZATO, “Noh and Greek Lyric” 3. H. NOTSU, "Fixed Structures of Ancient Greek Theatre and Japanese Lyric Drama No;" 4. M. PIERRE,"Un recit venu d’ailleurs : comparaison entre le recit de l’acteur d’aikyogen dans le no; et le recit du messager des tragedies de Seneque".
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
能楽とギリシア悲劇の受容の比較研究推進についてはブラウン大学教授Scafuro氏、Vanessa Cazzato氏、Maxime Pierre氏との協力関係を中心に、海外研究協力者たちとの共同研究が順調に進行している。同時に、F. Lissarrague氏及び、2021年来日予定の V. Cassato 氏や M. Pierre氏との緊密な連携関係により、この研究プロジェクトに関する国際的なネットワークが益々安定したものになり、具体的な成果が生まれている。ギリシア悲劇の日本における上演のデータベース作成の関連では、1958年に始まりほぼ10年間続いた東京大学ギリシア悲劇研究会の上演記録と資料収集が目下の最重要課題であることが理解されたので、資料の所有者の方と直接コンタクトを取りながらこれを最優先に進めている。これについても順調に進展している。国際シンポジウムの開催を通じ、海外の研究者とのネットワークづくりと意見交換が順調に進行したことが、すでに国際共著論文等の刊行として結実している。しかしながら、本研究の主要部分をなす「近現代日本における上演記録の作成」に関しては、当初の近代日本における上演記録の不足部分の補完作業を終え、英語訳を開始するというゴールにいまだ到達していない。最終年度において、近現代日本における上演記録の作成を完了し、期間内に集積することが出来た上演データの英語訳と、APGRD のデータベースとの連結作業を完成させるという予定であったが、これについてもまだ実現出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
近現代日本における古代ギリシア演劇研究および受容(翻訳、翻案、上演)の諸相を追究し、日本における古代ギリシア演劇研究および受容・上演が将来進むべき方向性を示唆するという目的を掲げ、今後の研究においては、従前の気付きや知見をふまえ以下の通り大きく3つの柱を再設定する。 (1)近現代日本における古代ギリシア演劇の受容の実態調査。とくに東大ギリシア悲劇研究会(1958~1970)に関わる第1次資料の収集とデジタルアーカイブ化を最優先課題とする。 (2)わが国の古代ギリシア悲劇の受容と上演の活動全体が、能など日本固有の伝統演劇(一種の儀礼的パフォーマンス)の諸要素の積極的活用の有無という根本的な選択の相違によって、受容の2大類型に分類できることを、その背景とともに明らかにする。 (3)現代に至る西洋人による古代ギリシア悲劇と能の比較研究について、儀礼的パフォーマンスと古代ギリシア演劇に関する宗教学的・人類学的な比較対照研究の伝統という、より普遍的な枠組みから捉え直し、改めて日本における研究・受容の在り方を問う。 この3本の研究の柱により、日本における古代ギリシア・ローマ演劇の研究と受容・上演を西洋におけるそれらと比較・対照にしつつ、また、海外の研究協力者との共同研究・意見交換・デジタルアーカイブ化・研究成果の発信を国際的な場において英語ないし仏語で行うという独自の特徴を維持しつつ、日本の西洋古典学研究と古代ギリシア・ローマ演劇の受容・上演に存在する特徴と根本的な問題点を照射すると共に、日本における古代ギリシア・ローマ演劇の研究と受容・上演が将来進むべき方向性を示唆するものとする。
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Causes of Carryover |
葛西(研究分担者)が3月13日から22日まで米国の大学及び学会(テキサス州南メソディスト大学ロースクール及びボストンのAssociation for Asian Studies学会)に出張する予定だったが、コロナウイルスにより先方から通知が来てキャンセル することになった。以上の理由で、今回は海外出張を取りやめ、来年度改めて出張を行うため、費用は次年度に繰り越すことととした。
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Research Products
(12 results)