2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K02611
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松原 陽子 明治大学, 商学部, 専任准教授 (10610371)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス文学 / 生成過程 / プルースト / 失われた時を求めて |
Outline of Annual Research Achievements |
査読付き学術誌で論文「『失われた時を求めて』におけるイメージと色彩:登場人物の瞳と背景をめぐって」を公表した。『失われた時を求めて』における複数の登場人物をめぐるイメージと色彩が作品の主題にどのように結びつけられるのか考察した。作品の生成過程において登場人物の間で入れ替わってゆくイメージや色彩を追って、そうしたイメージの交換の理由を探った。他方、小説の進展にしたがい、登場人物をめぐるイメージが変わってゆく理由を考察した。 また「『失われた時を求めて』におけるゲルマント公爵夫人」では、小説における主要な登場人物であるゲルマント公爵夫人のイメージを辿り、そのイメージの変遷が小説の主題といかなる関連を持つのか分析した。その際、草稿だけでなく『失われた時を求めて』に先行するプルーストの作品も含めて分析対象とし、『失われた時を求めて』における最終稿の描写と比較することで、この登場人物のイメージが形成されてゆく過程を明らかにした。 2019年9月に大阪大学で開催された国際シンポジウム「プルーストと受容の美学」で、研究成果「イポリットの死と絵画『カルクチュイ港』」を公表した。具体的には、『失われた時を求めて』における絵画『カルクチュイ港』を取り上げ、先行研究とは異なる観点からの考察を示した。本発表では、この絵画の描写文で展開されている比喩が、プルーストが読んでいた文学テキストにおいて見られることを明らかにした。またこの比喩が作品においてどのような装置として働いているか考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際シンポジウムにおける発表や査読付き学術誌論文の公表、著書に掲載された論文などにより、研究を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
生成過程を辿るため、草稿を含め網羅的な資料収集・閲覧をおこなう予定である。また、研究課題について、他の研究者と意見交換を続ける。
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Causes of Carryover |
予定していた出張ができなかったため。また、研究者を招聘することができなかったため。可能であれば、他の研究者と意見交換ができる場を設定する予定である。また、出張により国内外で草稿資料を含め資料収集・閲覧を行いたい。
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