2021 Fiscal Year Research-status Report
<第二世代>のホロコースト文学研究-1980年以降のドイツ・オーストリアを中心に
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17K02626
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
福間 具子 明治大学, 文学部, 専任教授 (50376521)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユダヤ系文学 / 第二世代 / ホロコースト / ローベルト・シンデル / ポストメモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2020年度のシンポジウムで発表した『<第二世代>のユダヤ系作家におけるツェラン受容と展開―ツェランからシンデル、ベッカーマンへ』を叢書として出版した。この論考は、本研究費での研究プロジェクトの核心部分を含みつつ、個々の作品の詳細な分析にも立ち入ることが出来た内容となった。すなわち、従来よりマリアンヌ・ハーシュの<ポストメモリー>という概念を重視してきたが、それがパウル・ツェランというホロコースト第一世代(体験者)からローベルト・シンデル、ルート・ベッカーマンという第二世代(非体験者)の間に実際に顕現していることを具体的に提示できた点は成果と考えられる。 また、ドイツ語の論文(査読あり)として、”Literarische Abrechnung mit der Vergangenheit. Ueber zwei Werke der zweiten Generation vor dem “Ende der Zeitzeugenschaft“を上梓した。本論は、第二世代の代表的作家であるシンデルの最新作『冷たい男(Der Kalte)』とドロン・ラビノヴィチの『どこか別の場所で(Andernorts)』を扱いつつ、2010年以降、第二世代の関心が、「ホロコーストの生き証人(第一世代)の死」と、「過去との決着」に新たに向かっていることを指摘した。これは第二世代文学の新たな展開として、欧米でもいまだ指摘されていない事実であり、研究期間が終わりつつある時点で、この現象を指摘できたことは価値あることと感じている。 もっとも、本来であれば現地に渡航し最終的な体系化に向けて確認したい事実や収集したい資料があったにもかかわらず、いまだに収束しない新型コロナウィルスの感染拡大により、研究をさらにもう一年間延期せざるを得なかったのは残念なことであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの第六波が欧州でも席巻していたため、今年度も現地へ渡航できず、研究に遅延があったことは否めないが、国内でも出来る資料分析、論文執筆に集中したため、進捗状況は総合的に見て概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方向については大きな変化はない。もともとの計画通り、資料収集と体系化を進め、重要なテーマについては詳細な論究を進め、論文として発表してゆきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、欧州での資料収集、現地調査が出来なくなったため。
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Research Products
(2 results)