• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2017 Fiscal Year Research-status Report

アレクサンドリアのフィロンの倫理思想:聖書学的・思想史的考察

Research Project

Project/Area Number 17K02628
Research InstitutionFerris University

Principal Investigator

原口 尚彰  フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (60289048)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywordsフィロン / 正義 / 倫理
Outline of Annual Research Achievements

平成29年度は本研究の初年度であったので、アレクサンドリアのフィロンの著作の原典の校訂版や、主要な二次文献の収集・整備に努め、本格的な研究を行う上での基盤を整えた。また、主要なフィロン研究書に目を通し、従来の研究によって解明されたことと、まだ十分に解明されていないことの両方を確認した。従来の研究は哲学的・宗教史的視点からのものが多く、主要用語の使用例を詳しく調べる語学的分析が十分になされていないことが確認できた。
モーセ五書に関するフィロンの一連の哲学的注解に目を通し、思想や表現の全体的特色を把握した上で、フィロンの倫理思想の考察に取りかかった。古代のユダヤ人哲学者であるフィロンの倫理思想を考える際には、旧約・ユダヤ教的な要素とヘレニズム的要素がどのように結び付いているかを調べることが重要である。本年度はフィロンの倫理思想の中核にある正義の観念を聖書学的・思想史的観点から分析した。
具体的には、正義を表す代表的ギリシア語であるディカイオシュネーのフィロンにおける用例をすべて調べた上で、その語学的・思想的特色を吟味した。また、正義と徳との関連についてのフィロンの発言や、正義と人類愛の関係についての発言を思想史的視点から検討した。この分析の結果、フィロンは正義の源泉を神の義に求める旧約・ユダヤ教的理解から出発しているが、ギリシア的な徳(アレテー)や人類愛(フィランスローピア)の観念を導入することによって、正義の観念をより普遍化していることが明らかになった。この研究成果は、「フィロンの正義理解」という題の論文として、フェリス女学院大学キリスト教研究所編『フェリス女学院大学キリスト教研究所紀要』第3号、2018年3月、5-18頁に掲載された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究はアレクサンドリアのフィロンの諸著作に関する文献学分析であり、語学的分析の基礎の上に、思想史的な考察を行うことを基本としている。ただし、アレクサンドリアのフィロン研究に関しては既に多くの優れた先行研究の蓄積があるので、二次文献を批判的に吟味しながら、一次資料であるフィロンの原典の解析に取り組み、新しい解釈を提案することが大切になる。特に、研究の初期段階では、積み重ねられてきた先行研究に丹念に目を通して、内容をよく咀嚼した上でそれらに対して適切な評価や位置付けを与えると共に、未解決の重要課題が何であるかを見極めることが大切となる。
平成29年度は当該研究プロジェクトの初年度であるので、まずは参照すべき重要な参考文献を古典学関係および聖書学関係のデータベースによって検索し、一次資料と二次文献を網羅した文献リストを作成した。次に、必要な資料の入手のための手配を順次行った。関連文献に日本語で書かれたものは少なく、ほとんどが英語またはドイツ語で書かれた文献であった。その一部は手持ちの資料や所属機関所有の資料で間に合わせることができたが、多くは資料を所蔵する国内の研究機関から取り寄せたり、新規購入するために取り次ぎ書店を通して海外に発注しなければならなかった。
フィロン研究に必要な資料を検索し、収集する際に、国内の研究機関所蔵の資料は相互利用のシステムを通して比較的迅速に入手することができたが、一部は海外の出版社への発注による購入であったので、資料発注から入手まで数ヶ月を要することも度々あった。そのため、先行研究に目を通して吟味し、フィロンの正義理解の本格的な研究に反映させるための時間が予想以上にかかり、研究遂行のペースが予定よりも多少遅くなった。

Strategy for Future Research Activity

研究の第二年度は、フィロンの倫理思想における中核概念であるノモス(「法」)の概念の分析に力を注ぐことにしたい。第一に、ギリシア語名詞ノモスがフィロンの著作においてどのように用いられているかを知るために、語学的分析を行う。具体的には、コンコルダンス(語句索引)を用いて関連語の使用例をリストアップし、それぞれの用例について置かれているコンテクストに沿って意味を解明する。第二に、ノモスの概念をギリシア思想の背景と旧約・ユダヤ的背景の両方の角度から検討した後に、フィロンにおいて両者がどのように結びついているかについて考察することとする。
フィロンのノモス理解の思想史的な特色を検討する手始めとして、第一に、ギリシア思想におけるノモス理解(法思想)の変遷をたどり、フィロンのノモス理解の背景を確認する。第二に、残存するフィロンの著作のほとんどが旧約聖書中のはじめの五つの書物であるモーセ五書の哲学的注解であるので、旧約・ユダヤ教における法理解との関連においてフィロンの法理解の特色を確認する。旧約聖書における法とは神がイスラエルの民に与えた倫理規範であるトーラー(「律法」)を指す。律法は神が民に与えた契約の条項でもあるので、イスラエルの民は神への義務の履行として遵守しなければならないと考えられていた。神が与えた律法という理解が、ユダヤ人哲学者フィロンにあってギリシア的法理解によってどのように再解釈されているかを見極めることが本研究の中心的関心事である。
尚、資料検索と発注を最優先で行い、できるだけ早く資料を入手できるように努力したい。また、必要があれば、研究作業の順序を思い切って入れ替え、資料が整っている部分の作業を先に行うことによって、研究全体の能率を上げる工夫をしたい。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] フィロンの正義理解2018

    • Author(s)
      原口尚彰
    • Journal Title

      フェリス女学院大学キリスト教研究所紀要

      Volume: 3 Pages: 5-18

    • Open Access

URL: 

Published: 2018-12-17  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi