2018 Fiscal Year Research-status Report
イエズス会演劇におけるエンブレムの機能に関する研究
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17K02630
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
千川 哲生 立命館大学, 文学部, 准教授 (50587251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 演劇 / イエズス会 / エンブレム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、16世紀後半から17世紀前半のローマを中心とする、イエズス会の学校演劇作品、芸術論およびエンブレム・ブックを、とりわけ演劇とエンブレムの関連を中心に考察した。具体的には、ステフォニオ、ストラーダ、ガルッツィら、コレッジョ・ロマーノのレトリック教育者たちが手掛けたイエズス会演劇に関する論考および劇作品を調査した。成果としては、ルネサンス期から展開されてきた詩学(演劇論)の議論を受けて、教育的効果と審美的価値を併せ持つイエズス会独自の演劇性を追求する独自の動きがあったことを、文献学的調査によって明らかにした。以上の成果について論文を執筆した。
次に、当時イエズス会士たちのあいだで広く普及していた「世界劇場」の観念と関連して、神の意志を反映した被造物同士の関係を解釈し、再現するための芸術的な手法として、エンブレムと演劇が同列に置かれていたことを明らかにした。ただし、これはあくまで理論的考察の分析に過ぎないため、今後の課題として、以上の分析を具体的な作品分析、上演形態の長さと結び付けると共に、同時代の世俗文学や他国のイエズス会士の論考との影響関係についても解明する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外の図書館や古文書館で適宜実施調査を行い、必要な資料を揃えつつある。しかし、研究の進捗に応じて新たな資料を調査する必要が生じ、具体的な成果として区切りをつけることが困難なため、研究に遅れが生じている。さらには、資料の読解に時間がかかっていることも大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に相当するため、海外での資料収集を行い、学会での発表、論文投稿のかたちで、研究成果を世間に還元したい。
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Causes of Carryover |
今年度前期(春セメスター)は在外研究を利用できたので、予定していた書籍の購入や図書館、資料館での調査についての支出を抑えることができた。
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