2019 Fiscal Year Research-status Report
イエズス会演劇におけるエンブレムの機能に関する研究
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17K02630
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
千川 哲生 立命館大学, 文学部, 准教授 (50587251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イエズス会 / 演劇 / エンブレム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、16世紀から17世紀にかけて、イタリアのコレッジオ・ロマーノで活躍したイエズス会士、とりわけステフォニオ神父やドナーティ神父の手掛けた演劇作品とエンブレムとの関係について研究を進めた。まず、祝祭に関するイエズス会の年次報告や上演作品の梗概を手掛かりとして、舞台に掲げられた銘、使用されたエンブレムの実例、劇の主題における共通項を探り、祝祭においてエンブレムが演劇やダンスなど他の芸術と関連していることを論じた。次に、ローマ国立中央図書館で調査した演劇、エンブレムの写本の読解を進め、とりわけアレゴリー的描写の観点から研究を進めた。当時のローマの状況や生徒の生活、メンバーの活動、世界宣教の様子、さらには作品の役割や観客との関係についてたえず言及するイエズス会演劇には、多くのアレゴリー的登場人物が頻出し、また、イメージ豊かな比喩を利用した解説とその解説がしばしば用いられている。他方でイエズス会のエンブレム・ブックにおいても同様のテーマに基づくエンブレムやアレゴリー的人物を利用したエンブレムが登場しているため、この点に関して両者の親和性が高いことを実例の分析と共に示した。第三に、イエズス会士による演劇作法に関する考察、とりわけアレゴリー的性質に関する考察を調査することで、人文主義的な古代悲劇の復興を目指すだけでなく、イエズス会の教育目標にふさわしい新たなアレゴリー的演劇の形態の創出という理念があったことを論じた。これらの成果は、2020年度以降に論文や学会発表において公表することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内での役職のため、本研究に割くことのできるエフォートが下がったことなどを主な理由として、2020年度への研究期間の延長が必要となった。加えて、2020年度(最終年度)に予定していた学会発表がコロナ禍のために2021年度以降に学会開催が延期となるなど、本研究の区切りをつけるには、延長期間が必要になる可能性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のために学会が中止や延期となり、また、国外での実地調査も当面不可能だと予測されるばかりか、遠隔授業のための準備など本研究以外のエフォート率を高めざるを得ない。手元にある資料の読解を進めることで調査を進展させることを考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度は学内での役職のため、本研究に割くエフォート率を下げざるを得なかったため、進捗状況に遅れが生じた。また、コロナ禍のために年度末に予定していた国外調査もキャンセルせざるを得なかった。 2020年度の使用計画としては、可能であれば国外(フランス、イタリア)での資料調査を複数回実施する。また、データベースの構築を主要な目的として、研究環境を充実させるために物品費を充当する。
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