2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Relationship between the Prominence of Studies of the Early Chinese Philosophers and the Old-style Prose Writers of the Mid-Tang in the Tang-Song Transition.
Project/Area Number |
17K02638
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
鈴木 達明 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (90456814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 韓愈 / 荘子 / 唐宋変革 / 天人相関 / 古文運動 / 柳宗元 / 天論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中唐の古文家における諸子学の思想的影響、特に天人観に注目して検討を加えた。天と人の関係性に関する考え方である天人観は、先秦諸子以来、中国思想史における重要なテーマとなってきた。中唐時期については、これまで柳宗元・劉禹錫の人間中心主義的な天人観が注目されてきたが、本研究では、従来あまり論じられてこなかった韓愈を取りあげ、その詩文や柳宗元の「天説」などを精読し、検討を加えた。その結果として、韓愈は伝統的な天人相関の枠組みを支持するが、同時に、天を人と異なる価値観を持つ存在であり、その秩序には世界の平衡状態を失わせる暴力性が含まれ、時には人と対立するものとしてとらえている点が重要な特徴として指摘できることがわかった。それは、韓愈の「不平の文学観」の背景として捉えられるものであり、更に、「天」に対する姿勢や特殊な術語において『荘子』の天人観と接続できる部分があり、諸子学の受容をそこに見ることが可能であるという見通しを得た。以上の成果について、「韓愈の天人観と先秦諸子の受容について」として口頭発表を行い、現在は論文として発表の準備を進めている。 本研究課題の全体を振り返ると、中唐古文家としては韓愈を、諸子としては『荘子』を中心として、その文学・思想における関係性を論じてきた。それは韓愈という個人にとどまるものではなく、「荘騒」の観念が後世に影響を及ぼしたように、また天人観が中唐古文家たちのコミュニティの中で論じられたものであったように、通時的にも共時的にも広がりを持つものであり、その意味で、唐宋変革という大きなテーマに接続可能な成果が得られたと考えている。
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