2017 Fiscal Year Research-status Report
A Crosslinguistic Study of Strong and Clitic Pronouns in Indo-European Languages
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17K02672
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 渉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90293117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 曲用パラダイム / 接語代名詞 / 融合 / 分散形態論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は印欧諸語の代名詞の曲用パラダイムの変異及びロマンス諸語の複他動詞文の非主語項を指示する接語代名詞群のパラダイムの変異を少数の制約のランキングから導くことである。 本年度は、まず、人称、格、数、ジェンダーの有標性階層及びこれらの有標性階層と双方向的意味役割階層の調和的制約配列から有標性制約と対抗する忠実性制約を踏まえて、収集した印欧語の代名詞のパラダイムの変異を制約の並べ替えから導くことを試みた。これは、 2年前に公刊した論文で提案した、現代ドイツ語の人称代名詞のパラダイムの分析の拡大を目論んだものである。この結果、これまで説明されていなかったタイプ(1人称・2人称:主格~対格/与格(=目的格)、3人称:主格/対格~与格)が説明可能であることが判明した。ドイツ語では、独自の対格形式を持つ系列、(主格と異なる)対格/与格(目的格)形式を区別する系列、主格/対格形式が与格形式と区別される系列という3つの系列が人称及び単数・複数の区別に基づいて区別されていた。 一方、格融合を伴う「主格~対格/与格」のパターンと対立する「主格~対格~与格」のパターンが3人称単数男性代名詞にのみ現れる場合(例:中期オランダ語)、3人称代名詞全般に現れる場合(例:オック語)、3人称代名詞全般・2人称単数代名詞に出現する場合(例:ガリシア語)は現代ドイツ語の人称代名詞のパラダイムの分析の延長線上では分析できないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
印欧語の人称代名詞のパラダイムの変異の研究はデータの収集には目途がついたものの、これまでに用いてきた分析方法(制約ランキングによる統語的素性複合から形態的素性複合への写像の後に音韻形式を挿入する)に新たな動機づけを取り入れる必要があることが判明し、その動機づけの定式化とこれまで用いてきた方法論への取り込みを考察中である。 また、この人称代名詞のパラダイムの研究に時間を多く取られたため、複他動詞文の非主語項の接語代名詞群の変異のデータの集積及びその分析にも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、予定より遅れているロマンス諸語の複他動詞文の接語代名詞群の変異のデータの収集を進めると共に、人称代名詞のパラダイムの変異を動機づけていると思われる有標性以外の要因を同定することにより、収集したパラダイムの分析を一層進める。
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