2018 Fiscal Year Research-status Report
トルコ諸語のプロソディーをふまえた通言語的実験音声学研究
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17K02690
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
福盛 貴弘 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (00407644)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トルクメン語 / 母音 / フォルマント周波数 / トルコ諸語 / 二重母音 / 長母音 |
Outline of Annual Research Achievements |
トルクメン語の音声学的特徴をボトムアップ的に研究を進めるために、今年度は母音の音響解析を重点的に行った。この解析は、後に音節やアクセント、イントネーション分析の基盤となるため重要であると考えられる。それぞれの母音のフォルマント周波数から、以下のように音価を確定した。a:非円唇、(前寄り)後舌~(後ろ寄り)前舌、広。e :非円唇、前舌、(広め)半狭~(狭め)半広。aウムラウト:非円唇、前舌、狭め広。i:非円唇、前舌、狭~広め狭。o:円唇、後舌、(広め)半狭。oウムラウト:円唇、前舌、半狭。u:円唇、後舌、狭。uウムラウト:円唇、前舌、狭~広め狭。y:非円唇、中舌、狭~(広め)狭。また、yが音声学的に二重母音として実現する際には、トルクメン語のyの音韻構造は/VC/ではなく/V/であり、後半を主母音と考えると相対的な長短関係においても音声学的には二重母音の要因を満たしていると解釈できる。よって、IPA表記としては、[ɨj]よりは[ɨi]とする方が適切だと考えられる。また、aウムラウトは長母音の際には、軽微な口蓋化はあるが、二重母音とは見なせないことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トルコ諸語の音声研究は、トルコ語についてはようやく基盤ができあがった段階であるが、他の言語については調音音声学的記述はある程度なされているものの音響解析で検証するところまでは至っていない。また、他のメジャー言語のように、多大な先行研究がある、誰かがいつかやってくれる、ということを期待できるものではない。よって、当該言語の音声学的特徴を析出する場合には、一から積み上げていくしかないというのが現状である。そういった研究環境の中、ようやくトルクメン語に関する母音の音響解析について、世界に先駆けて公刊することができた。短母音の実態だけでなく、長母音や二重母音の特徴についても精査された。この先、音節や音調の研究を進めるにあたっての基礎データについて整ったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
トルクメン語のアクセントやイントネーションといった音調について、音響解析をえてその特徴を析出しようと考えている。トルコ語と類似している点が多いであろうという予測はできるが、寸分変わらず同じというわけではないということを念頭に置き、研究を進めていく。アクセントに関する問題は、強さアクセントか高さアクセントかを確定すること、高さに関する規則は下がり目で説明できるかということである。イントネーションについては、句末、節末、文末のそれぞれの上昇調における機能を分化することが課題となる。また、音節構造については、これまでトルコ語では一覧を示すことができたが、ついでトルコ諸語全体の傾向を概観するために、12言語の音節構造を捉えていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度より、より精密な分析ができるよう、音響解析装置を最新機器に刷新するために、2年間は執行額を抑えてきた。ただし、データ処理に対する謝金といった人件費は一定額使用しており、そのことによって、研究計画の施行にあたってに支障は来さなかった。
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