2017 Fiscal Year Research-status Report
Life-long develpment of lexicon and language processing
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17K02764
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Research Institution | Aichi University Junior College |
Principal Investigator |
杉本 貴代 愛知大学短期大学部, ライフデザイン総合学科, 准教授 (70267863)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 語彙表象 / 複合語処理 / 幼児期初期 / 児童期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語話者のレキシコン(心的辞書)と言語処理の発達的特徴を捉えることにある。これまでの研究から、日本語母語話者は、幼児期と児童期では言語処理の方略が異なる(変化する)ことが示されてきた。また、晴眼児と先天盲の子どもでは、幼児期は共通して音声的特徴に依存した言語処理を行うが、文字を獲得した後は、墨字を習得する晴眼児および弱視児と、点字を習得する先天盲の子どもでは、言語処理が質的に異なる方向へ変化することが分かっている。こうした背景から、本課題研究では、言語処理の特性をより詳細に調査すべく、研究対象を2歳児から成人と幅を広げるとともに、母語話者と学習者の両者の言語処理について検討し言語発達過程に影響を及ぼす諸要因の解明を目指している。 2017年度は、①2歳児から児童を対象とする言語の産出と知覚に関する調査と②論文執筆を行った。①では、2歳児~3歳児対象の調査から、複合語理解の発達の流れおよび語彙表象の発達の特徴をおおまかに捉えることができた。また、児童以上を対象とする調査から、読み書きを習得した児童は、語彙タイプを区別できることが示唆された。構文能力の発達的特徴についても並行して調査を行った。幼児期の音声言語処理では、文法形態素などの獲得が段階的にみられ、徐々に完成することも分かった。児童期には、音声言語での文法形態素の獲得過程と読み書きにおける構文理解の発達過程が異なる点も調査から明らかになりつつある。日本国内(中部地方)と海外(米国ハワイ州)の成人の日本語学習者に対しても、様々な調査法を活用して予備調査を進めることができた。これらの成果は、2018年度に学会等で発表したうえで、論文投稿する予定である。②では、幼児期の連濁処理に関する章を分担執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本務校の研究支援体制が整備されており、研究に専念しやすい。また本務校とハワイ大学が良好な関係を築いているため、調査が進展しやすい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、前年度開始した縦断研究を進めるとともに、調査対象年齢の幅を広げていく。また、多様者言語話者を対象とする本調査も本年度中に開始する予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度末に行った調査で諸費用および国際学会出張のための旅費等については、すでに使用すみであるが、大学の会計の関係で2018年度に支払いを行うため、2018年度の予算からは支出されることになっている。また予備調査のための米国出張は、2月の勤務先の研修引率時に同時に行ったため、費用がかからなかった。未使用分は、2018年度のニュージーランドでの国際学会発表と現地調査と、2017年度に予定していたパソコンの購入等に使用する予定である。
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