2023 Fiscal Year Annual Research Report
Life-long develpment of lexicon and language processing
Project/Area Number |
17K02764
|
Research Institution | Aichi University Junior College |
Principal Investigator |
杉本 貴代 愛知大学短期大学部, ライフデザイン総合学科, 教授 (70267863)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | syntactic development / linguistic environment / language perception |
Outline of Annual Research Achievements |
複合語は,音韻,語彙,統語,意味の各範疇の処理が関与する言語の最小単位とされる.幼児期の子どもは,語彙の音声特性に依存した幼児期特有の複合語処理方略を示すが,就学期を境として,複合語の処理方略を質的に変化させ,成人に近づいていくことが先行研究から示唆されている.本課題研究では,先行研究データを統計的に再分析し,個人の認知発達的特性と言語環境および言語文化的背景等を考慮して,言語処理の発達的特徴を統合的にとらえる枠組みの開発に努めてきた.具体的には、幼児期から成人にかけてみられる連濁処理方略の発達的変化に関する普遍性と多様性を明らかにすることを目指している。話者の多様な文化的・認知的特性等も考慮した発達モデルを構築することを目的としてきた。 2023年度は本課題研究の最終年度となり、実行可能な言語獲得における文法的階層性の獲得過程に関する実証研究をさらに進める予定であったが、7月と12月に入院することとなったため、これまでに収集してきたデータを中心に再分析すること以上は困難であった。日本語母語児と非日本語母語児で比較するために、中部地方の保育施設でこれまでに収集してきた8名の2-3歳児の多言語話者と日本語母語児の複合語使用について既存のデータの分析を行った。20年度以降コロナ禍において縦断的かつ個別に実験を行うことができなかったため、これまでに参与観察で録画した大人と子供の相互作用場面の動画から研究対象児の複合語産出の特徴を分析した。 すでに論文化していた視覚障害をもつの日英バイリンガル児は3歳以上であったため比較が困難であったことと、多言語話者の2歳児では日本語習得状況にばらつきがあり、複合語と連濁産出の発達過程について、生活年齢ではなく、言語獲得段階(語彙・統語・意味)との関連でさらに追跡調査する必要が示唆された。子どもをとりまく言語環境の質にも着目することも重要である。
|