2017 Fiscal Year Research-status Report
Labeling in syntax: a top-down approach
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17K02811
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
寺田 寛 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (90263805)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統語論 / 生成文法 / チョムスキー / 付票貼付(labeling) / 反局所性条件 / 付票張替 (Relabeling) / 名詞句 |
Outline of Annual Research Achievements |
Chomsky (2013, 2015) で提案されている付票貼付演算法を検証することが英語統語論の研究の中心的な課題となっている。そのため、今年度の研究では、この付票貼付演算法を用いて、主語からの前置詞句の摘出に関する現象を説明できる分析を精緻化し、Terada (2008) 「付票未貼付統語体から摘出されたwh句とその残余句の交互前進」として大阪教育大学英文学会誌に2017年11月に投稿した。 この研究は昨年度からの継続して行っていた研究であり、全国学会の学会誌に投稿したものの、採用されなかった。その際、学会の査読委員からいくつかの問題点を指摘していただいた。その問題点を解決し、この研究の中間的な発表となる上記の論文を発表した。 この研究では、Boskovic (2016) が提案した「時間差付票貼付説」という仮定を用いない別のアプローチを創出することを試みた。付票が貼付されていない統語体は一致操作を結ぶことができないという仮定をもとに、査読委員から指摘された問題点を解決することができる。その仮定とBoskovic (2016) の反局所性条件(Antilocality Condition)による主語条件効果の説明を合わせることで、Boskovic (2016) が行ったこの現象の説明よりもより広い範囲のデータを説明することができたと考えられる。 名詞の特性と名詞句の構造についても研究を行い、文献資料のデータを収集・整理している。 また、付票貼付のもう一つの有力な説であるCecchetto and Donati (2015)のRelabeling分析を日本語の関係節に適用した共同研究も進め、国際学会でポスター発表を行った。 「最新理論言語学用語事典」(朝倉書店)を分担執筆し、付票貼付を中心とした生成文法の最新の概念を解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トップダウン式の派生をもとにして付票貼付への新たな方向性を考察する研究をもっと進める予定であった。しかしながら、文部科学省が進めている免許法認定講習に協力することが本務校で求められた。これは現職小学校教員に中学校二種免許を取得させるための取組である。そのため、新たに英語学講義を行うための準備が必要となった。 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1380724.htm さらに、本務校での学部改組とカリキュラムの改訂にともなう外国語科目「英語1」の講義が増えた。このような理由で教育面に多くの時間を割く必要が生じた。 このため、研究に時間を費やすことができず、昨年度からの主語条件効果の研究の問題点を解決する論文を出版したことと、Cecchetto and Donati (2015)のRelabeling分析を日本語の関係節に適用した共同研究を国際学会でポスター発表を行うことのみにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
主語条件現象の説明に中間的結論となるTerada (2018) を発表したので、2018年度は当初の目標どおり、トップダウン式の派生にもとづく付票貼付と構造構築と移動についての研究に取り組む。まずは主要な基本的構文について検討する。Chomsky (2013, 2015)で提案されている付票貼付演算法の問題点を検討し、構造をトップダウン式に派生する場合には2つの構成素どうしを併合することとなるので、まずそこで付票はどのようにして決定されるかという点が問題となる。この際にChomsky (2013, 2015)の付票貼付演算法がそのまま生かせるのか、Cecchetto and Donati (2015) の探査演算法(Probing Algorithm)を用いるべきであるのかという問題を解決する必要がある。考察すべき現象には、受け身や繰り上げなどのA移動と関係代名詞化や疑問文形成などにみられるAバー移動の2つの現象について文献で議論されている重要な問題を整理することから研究を始める。 さらに名詞句の構造についての研究を進めるため、さらにデータを収集しかつ整理することを継続して行う。その一環として、The Cambridge Grammar of the English Languageの第5章の翻訳を行うこととする。
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Causes of Carryover |
海外の言語学・英語学の研究書を購入するために140万円ほどの額を使う予定をしていたが、出版された研究書の当初の予測よりも少なかったため、次年度に繰り越して、次年度に出版される研究書を購入する金額に充てることとした。
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