2019 Fiscal Year Annual Research Report
Synchronic and Diachronic Studies in English Off-glides
Project/Area Number |
17K02819
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤原 保明 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (30040067)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英語のわたり音 / 入りわたりと出わたり / 母音連続 / あいまい母音 / 黙字 / 在来語 / 外来語 / 大母音推移 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語の「わたり音」は、yacht, yes, young, wet, wind, wonder などの語頭の [j, w] のように後続の母音へ移行する「入りわたり」と、boy, day, say, cow, go などの二重母音の第二要素 (=[i, u]) のように母音からの「出わたり」から成る。音声学的には、前者は子音、後者は母音とみなされ、表記上も区別されているが、音韻論的には子音の可能性がある。それゆえ、本研究では、現代英語の正書法、わたり音の音声上の特徴、機能、および在来語と外来語の語源と借用の時期に関する膨大なデータを分析し、「出わたり」も「入りわたり」と同様に、音声上のみならず機能上も語源上も子音の /j, w/ とみなせるという結論に達した。 さらに、英単語の大半は「閉音節」で終わり、語間での「母音連続」が避けられており、語中の音節間での母音連続も「出わたり」によって避けられていることに着目し、最終年度は〈y〉と〈w〉以外の母音字〈a, e, i, o, u〉について、語末で無強勢の場合に対応する音価を分析し、中英語の中頃以前の「在来語」とそれ以降の「外来語」では母音字に対応する音価には大きな相違が生じうることを明らかにした。たとえば、語末の無強勢の〈e〉は在来語では「黙字」になるが、外来語では [ei] (=/ej/) か [i:] (=/ij/) に対応し、語末の無強勢の <a> は外来語にのみ用いられ、あいまい母音だけに対応する、その他の母音字はいずれも「母音+出わたり」で終わる。 これらの結果は、中英語期の新たな二重母音の成立や〈e〉で表わされる語末の「あいまい母音」の消失、さらに「大母音推移」と呼ばれる大規模な音変化など、英語史上の主要な音変化の動機やメカニズムの解明に寄与しうる大きな成果であるといえる。
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Research Products
(4 results)