2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of course materials of Sino-Japanese words including a long vowel: by analogy with the Chinese reading and utilizing phonetic elements
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17K02837
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒沢 晶子 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 教授 (50375333)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 漢字音 / 音符 / 長音 / 清濁 / 中国語母語話者 / 非中国語母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
長音に限らず、漢字音学習に音符がどのくらい活用できるのかについて、音符の50音順に常用漢字の字音を網羅的に調査し、そのうち、カガ・タダ・ナ・ハバ・マ行の結果の報告を学会発表および論文の形で行った。804字の形声文字を249の音符グループに分類したが、音符字と同音の字は584字に及ぶ。中国語の頭子音が、より単純な音韻構造を持つ日本語に入って、有気無気などの違いが失われたり、中国語中古音の有声音が写された呉音でなく、その後無声化が進んだ長安音を反映した漢音を採ったため、日本語で同音になった字音も多い。 こうした同音符同音の字について、字音語の学習レベル別に導入する例を示した。これは、前年度、欧州の学会で、学習者が上級に至る前の段階で、音符が活用できないのかという質問を受けたことに応えたものである。字音語のレベルをjReadability によって判定し、音符と字音語を①初中級(例 長:社長、出張、手帳) ②中級(例 亢:航空、抵抗、炭坑)③上級以上(例 畜:貯蓄、家畜)の3段階に分けた。①の音符数は44で③の45より少ないが、漢字数は135字で、③の108字よりも多い。①の音符当たりの漢字数は3.1字で②、③の2.4字より多く、早い段階での音符学習の効果がより大きいことを示している。 一方、呉音か漢音かによって、同じ音符グループの字にも清濁(例:奉、棒)や鼻音・非鼻音(例:妄、望)の違いが生じた。そのほか、中国語上古音から中古音への変化が音符グループ内に複数の字音をもたらしたものもある(例:各、絡)。調査した範囲では、字音1種類の音符グループが117あって最も多く、次いで字音2種類が98、3種類23、4種類以上11であった。字音1種類のものが半数近く、字音2種類までで全体の約86%を占める。二つ目の字音と字の組み合わせまで覚えれば、大多数の漢字の字音が類推できると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画通りではないが、字音語の学習レベル別に同音符同音の字音を持つ形声文字を分類することによって、当初考えていた上級より早く、初中級の段階から音符学習のできる教材にする準備が整いつつある。また、平成29年度の報告で改善点として挙げた「音符のうち、それを持つ漢字グループの字音が同じで活用度が高いものを先に学習し、複数の字音に分かれるものを後で学習するように、提出順序を工夫する」ことにも適う。これは、中国語母語話者だけでなく、母語の知識に頼ることのできない非中国語母語話者がより効果的に漢字音を学習できるものとすることをも意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
1 音符基礎調査(対象:常用漢字中、1音符に2字以上の字を持ち、現行字体で音符が見分けられる形声文字)の結果全体を分析する。 2 これまでの試用結果に基づいて、中国語母語話者向けの字音対照教材を改訂する。 3 音符基礎調査の結果に基づき、同音符同字音の字について、その字を含む字音語の学習レベル別に分けた音符活用教材を拡充する。 4 複数の字音を持つ音符グループの字については、頭子音の調音点や母音など、異音間の共通点を活かして学習できるよう工夫する。
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Causes of Carryover |
欧州の学会に参加し、その旅費が計画より高額となったため、予算の範囲内でまかなうことができなかった。また、その未使用分を研究室の古いデスクトップ・コンピューターに買い換えの必要が生じた場合に備え、とっておいたが、年度内には買い換えずに済み、それを次年度使用とすることにした。
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Research Products
(4 results)