2019 Fiscal Year Research-status Report
日本社会における外国人と日本人の異文化相互理解に関する質的実証研究
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17K02838
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
安 龍洙 茨城大学, 全学教育機構, 教授 (80361286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 哲雄 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (20172249)
石鍋 浩 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 教授 (90424051)
松田 勇一 宇都宮共和大学, シティライフ学部, 准教授 (50406279)
青木 香代子 茨城大学, 全学教育機構, 講師 (00793978)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国人の日本観 / 日本人の海外留学観 / 日本人の外国観 / イメージの変容 / PAC分析法 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の今年度は、留学生の日本のサブカルチャー観、日本人学生の韓国サブカルチャー観及び韓国留学観、日本人学生の外国留学観、日本語教師の韓国観について調べ、論文発表5件の成果を上げた。 1)欧米出身留学生を対象にした研究では、欧米出身留学生は日本のサブカルチャーは可愛さをアピールし種類が多いと感じており、全体的にポジティブな印象を持っていることがわかった。また、日本のサブカルチャーに対するイメージは、対象者自身の実際の体験によるものが多かった。2)日本人学生の韓国サブカルチャー観については、1回目の調査(渡韓当初)では、K-pop、美容、韓国コスメ、カフェ、お酒が共通したイメージであったが、2回目の調査(帰国直前)ではKpopや音楽番組に関するイメージが、留学生活を通して追加・強化されていることがわかった。3)日本人交換留学生(韓国2名、スペイン1名、ブルガリア1名)を対象に行った海外留学観においては、自身の視野の拡大や思考の深化が見られ、より客観的な自己分析ができるようになることがわかった。4)日本人学生の韓国観では、「学歴社会」「上下関係が厳しい」「軍隊」「兵役」など、日本にはない制度に対するイメージが挙げられた。これらのイメージは渡韓前に持っていたものも多いが、留学を通してイメージが強化されたケースや、韓国での生活を通して新しく生まれたイメージもあった。5)韓国に長期滞在する日本語教師の韓国観においては、日本語教師自身が受け持っている日本語学習者に加え、現地の人との接触に関わる対韓イメージが共通していることがわかった。対象者が置かれている環境および現地人との接触がイメージ構造に影響するという先行研究の知見と類似の傾向が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように今年度は、留学生の日本サブカルチャー観、日本人学生の韓国のサブカルチャー観及び留学観、日本人学生の外国留学観、日本語教師の外国観について調査・分析し5件の論文発表をした。 特に、日本人学生の海外留学観では海外留学を通して視野の拡大や思考の深化が見られ、より客観的な自己分析ができるようになること、韓国長期滞在の日本語教師の韓国観では日本語教師自身が置かれている環境および現地人との接触がイメージ形成に影響を与えることが確認されるなど、興味深い知見が得られた。今年度は、1)日本人の海外留学観及び外国観、2)外国人留学生の日本観・日本留学観・日本のサブカルチャー観の結果から日本人と外国人の相互理解の実態と特徴について、いくつか新しい知見を得ることできた。そのため、研究がおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年の今年度は、これまで蓄積したデータの全体的なバランスを考慮し不足するデータの補充研究を推進する。研究成果及び知見と理論的考察を学会誌等で発表して批判や示唆を得る。また、これまで得られた研究結果を利用して質問紙を作成し調査(量的研究)を行う予定である。さらに今年度は、日本で暮らす外国人の生活上のトラブルと、留学生のアルバイトに焦点を当てて調査を行い、日本社会における異文化不適応の問題についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究代表者及び研究分担者の勤務校で主にデータ収集を行ったため、当初の計画より旅費の支出が少なかった。 また、これまで3年間研究分担者・石鍋氏の勤務地で主に研究打ち合わせを行ったため、当初予定していた石鍋氏の旅費等の支出がなかった。その未使用額はこれまで蓄積したデータの文字起こしの費用及び学会発表の際の出張費用等に充てる予定である。 以上の理由により、次年度使用額が生じたが、次年度は国内・国外の調査対象を広げて研究データの収集及び学会・論文発表を予定しており、それに今年度までの未使用額を充てる予定である。
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Research Products
(5 results)