2018 Fiscal Year Research-status Report
カタカナ語の語彙知識に関する研究‐意図的学習のための教材開発をめざして‐
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17K02852
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 教授 (30271084)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本語教育 / カタカナ語 / 外来語 / 類義語 / 語彙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,語彙知識の「使用」に焦点をあて,外来語などのカタカナで表記されるカタカナ語とその類義語との使い分けに関する調査を行う。従来,カタカナ語は周辺的な存在とされてきたが,一部は基本語彙として定着し,これまで使われていた類義語と共存するようになったことが先行研究で指摘されている。カタカナ語がどのような文脈で使われるのか,また,どのような語と共起するのかを明らかにし,それらの結果をカタカナ語学習のための教材開発にいかすことをめざす。 2018年度は,前年度に引き続きカタカナ語とその類義の和語および漢語との使い分けに関する質問紙調査を実施し,調査結果の分析を行った。調査語彙は,日本語母語話者を対象として行ったカタカナ語と類義語との使い分けの調査で,日本語母語話者に一定の使用基準がみられることが明らかになった12ペア(24語)である。これらのカタカナ語は,類義語と使い分けられている基本外来語のサ変動詞で,使用頻度が高い語である。カタカナ語と類義語を提示して得られた産出文から共起する語をそれぞれ抽出して比較し,また,辞書で記述された語義を用いて意味的に分類した。さらに,カタカナ語と類義語の違いに関する自由記述も分析して,日本語学習者と日本語母語話者の使い分けの違いを探った。その結果,日本語学習者は産出文でカタカナ語も類義語も共起する語が同じ,あるいはカタカナ語と類義語に違いがないなどの自由記述も多く,使い分けに困難をともなうことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度も,日本語学習者に対するカタカナ語とその類義語との使い分けに関する調査(調査1)を引き続き行い,調査結果の分析を行なった。これは,調査対象者となる日本語学習者が当初の予想よりも限定されデータの収集に時間がかかり,2017年度に進捗状況の遅れが生じたためである。しかしながら,今年度は調査1のデータ収集を終え,日本語学習者と日本語母語話者の結果を比較し分析することができた。 また,カタカナ語と類義語との使い分けに関する新たな調査(調査2)の予備調査にも着手した。調査2では,調査1の結果をもとに調査するペアを精選し,その上で様々な文脈での類義語との使い分けに関して選択式の質問紙を作成し調査を実施する。さらに,留学生が学ぶカタカナ語を考える基礎資料として,大学の講義のシラバスでのカタカナ語の使用状況も調査した。上記の調査と平行して,カタカナ語や第二言語習得関連の文献を収集し精査した。現在までの進捗状況は,おおむね順調に進んでいると考えられる。 以上の研究成果の一部は,学会で口頭発表を行い(2018年8月),論文としてもまとめた(2019年3月)。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,これまで行った調査(調査1)で収集した学習者のデータの分析を進め,日本語母語話者と日本語学習者の結果をさらに比較し,考察を深める。また,2018年度に予備調査を行ったカタカナ語と類義語との使い分けに関する新たな調査(調査2)をすすめる。調査1で用いた文産出法や類義語との違いを自由記述する調査方法では調査対象者の負担が大きく,また日本語学習者の日本語レベルも限られるため,調査2では,さまざまな文脈,意味での使い分けについて聞く選択式の質問紙によって調査を実施する。質問項目は、日本語母語話者の産出文や予備調査の結果をもとに作った文脈で、カタカナ語とその類義語の使用が受容できるかどうかを4段階(受容できる~受容できない)で評定する問いとする。2019度は,調査2を中上級レベルの日本語学習者に実施しデータを収集する。なお,統制群として日本語母語話者にも調査を行い,日本語学習者との結果を比較する。カタカナ語が使われる文脈やコロケーションを探り,学習上の困難点を整理し,何をどのように教えると効果的かを検討する。 今後も,研究の成果を国内や海外の日本語教育に関連する学会で口頭発表として発信し,また,論文執筆も行う予定である。進捗状況にあわせて研究分担者・協力者と研究打ち合わせを行い,十分に連携して計画の遂行をめざしたい。
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Causes of Carryover |
前年度から計画していた日本語学習者を対象者としたカタカナ語と類義語との使い分けに関する調査が遅れ,それに伴い当初の予定よりデータ数が限られたため,謝金が減額となり次年度に繰り越しとなった。それらは,今年度実施予定の新たな調査のデータ入力等の作業のためのアルバイト謝金とする。また,最終年度でもあるので,これまでの研究成果をできるだけ広く発信する機会をもうけたい。そのための研究発表を学会等で行う旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(2 results)