2018 Fiscal Year Research-status Report
L2 English grammar development of false beginners in an extensive reading program: A dynamic usage-based approach
Project/Area Number |
17K03000
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
戸出 朋子 広島修道大学, 人文学部, 教授 (00410259)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動詞項構造 / 統語複雑度 / 動的用法基盤言語発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多読に取り組む英語学習者の英語基本構文の発達の様を,用法基盤言語習得の枠組みで縦断的に研究することである。英語基本構文,特に動詞の項構造がほとんど身についていない高校生や大学生が少なくないことが,深刻な問題となっている。これは,英語と類型的に異なる日本語の影響で主語の習得が困難であることが関係しており,下位層の生徒にとって英語基本構文の学習は容易ではない。用法基盤言語学に依拠すると,構文習得は,具体事例をユニットとして処理しそれを繰り返す中で,事例基盤で創発すると考えられ,多読やその他の言語活動を通して,一進一退を繰り返しながら徐々に進むと考えられ,縦断的に習得を見ていく必要がある。 平成30年度では,多読授業(19か月間実施)の中で書いたストーリー筆記データを分析し,動詞項構造という視点から統語複雑度に伸長が見られたかどうかを検証した。統語複雑度を「一動詞あたりの項の数の平均」と操作的定義し,対応のあるt検定で検証した結果,指導実施前とその19か月後に有意に伸長したことが明らかになった。 また,各参加者の19か月間の軌跡を見るために,縦断的に20回に亘って収集した各参加者の筆記データから,ゼロ主語産出(例,Today had a party),普通名詞主語産出,代名詞主語産出それぞれの割合をプロットし,その変化を見た。平均値の軌跡から,1) 初期段階ではゼロ主語産出で占められるが,すぐに名詞主語が増加し,その後から代名詞主語産出が出現すること,2) この変化は前進と後退を繰り返し,大きな個人内変異が成長の兆しであることが明らかになった。さらに,典型的な軌跡をとった参加者2名のデータを詳細に分析したところ,代名詞主語の出現の前には,教師が代名詞を使用するようにとのフィードバックを与えており,それを受けて代名詞を使ってみようとする主体性が,その2名の中に見て取れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定として,平成30年度は,a) 構文発達に伸長が見られるかどうかを指導の実施前と実施後のデータを比較して検証し,b) 構文発達の過程を見るために個人の軌跡の変化を分析することを計画していた。研究実績の概要にも記載した通り,a) b)とも予定通り行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,多読指導を受ける参加者の出力データ(ストーリー筆記データ)を分析して,文法能力が向上したかどうか,どのような過程を経て発達したかを検証したが,平成31年度(令和元年度)は,入力データに注目し,多読テクストをコーパス分析して各種主語(典型的な主語から拡張的な主語までの様々なタイプの主語)が多読テクストの中で提示されている順序と頻度を明らかにする。その上で,令和2年度には,入力と出力の関係性を検証するつもりである。 また,平成30年度に行った参加者の主語使用の軌跡の分析であるが,平成30年度はグループとしての平均的な軌跡を見るにとどまっていたので,今後,平均的でない軌跡を示していた参加者の個別データを詳細に分析する。
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Causes of Carryover |
米国アトランタで開催されたAmerican Association for Applied Linguisticsでの発表にかかる旅費を,当初,研究協力者の分も合わせて申請していたが,研究協力者が校務のために参加できなかった。結果として,協力者の旅費として計画していた分が次年度使用額となった。 令和元年度は,研究代表者が米国ジョージタウン大学で客員研究員として研究することを予定しているので,協力者との会議(共同分析)のために一時的に帰国する必要がある。そのための旅費として使用する予定である。
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