2020 Fiscal Year Annual Research Report
L2 English grammar development of false beginners in an extensive reading program: A dynamic usage-based approach
Project/Area Number |
17K03000
|
Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
戸出 朋子 広島修道大学, 人文学部, 教授 (00410259)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 用法基盤アプローチ / 多読 / 事例基盤構文習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語の文法は,言語を使用する中で創発するという用法基盤アプローチの研究が台頭してきている。この理論では,「言語は意味と形がつながったユニットであり,個々の状況の中で具体的な言語事例をユニットとして処理し繰り返す中で文法が創発する」と考える。日本の英語教育のような教室のみでの第二言語習得の場合,入力中の事例の質と量を確保することが課題であり,そのためのアプローチとして多読が挙げられる。 本研究では,多読に取り組む高校生の文法発達(主語・述語動詞)を研究し,A)多読で触れる入力の質と量,B)多読後に行われる活動での産出での構文発達という観点で分析した。A)では,多読用図書として使われている英国児童用図書で用いられている主語のタイプと頻度を分析した。初期段階では指示対象を具体的に特定できる用法で占められており,同じパタンの繰り返しの中で,徐々にメタファ的表現が導入されており,理想的な入力であることが明らかになった。B)では,多読後の筆記を縦断的に分析したところ,1) 多読入力で出会った事例を取り入れながら,事例基盤的な発達が見られること,2) 主語については最初はゼロ主語産出で占められているが,普通名詞主語産出が増加し,その後から代名詞主語が出現するというレパートリーの拡がりが見られること,3)それは,学習者自身の意識的で主体的な関与が関係していることが明らかになった。 さらに,用法基盤アプローチの全体像の中での言語指導の在り方をまとめた。当初10月に日本第二言語習得学会で講演予定だったが,新型コロナウィルスの拡大により中止となったため,2021年6月にオンラインで講演する予定である。まとめる中で見えてきたことは,頻度の問題だけではなく,学習者がコミュニケーションの中で自分をどう位置づけようとしているかというアイデンティティの問題も視野に入れて研究を行う必要があるということである。
|