2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
末柄 豊 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70251478)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 書 / 仮名消息 / 署名・花押 / 三条西実隆 / 戦国時代の天皇 / 紙背文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した「研究実施計画」にそいつつ研究をすすめ、下記のような進捗をみた。 ①署名・花押総覧の作成:『実隆公記紙背文書花押署名総覧(僧侶女性編)』の刊行に向けて作業をすすめた。具体的には、東京大学史料編纂所がホームページ上で公開する所蔵史料目録データベースによって検索可能な当該文書群の文書画像と高橋隆三氏の手になる刊本『実隆公記』(続群書類従完成会刊行)との突合をおこない、人物ごとに署名花押の画像を確認し、標本となるものを選定した。今後さらなる整理および検討を加えたうえで、2018年度中に報告書を刊行する目処が立った。 ②女房奉書を中心とする仮名消息の読解のための入門的な自習教材の作成:大和文華館所蔵双柏文庫に所収されている2通の三条西実隆の消息について、釈文・通釈・解説を含み込んだ論文「双柏文庫の三条西実隆消息二通」を執筆し、『大和文華』誌において公表した。 ③群としての書状・仮名消息の翻刻・検討:禁裏文書(東山御文庫所蔵文書のみならず、元来禁裏文書であったが江戸時代に禁裏の外に流出したものを含む)を中心にすえ、後柏原・後奈良・正親町という戦国時代の天皇自身の手になる書状・消息に注目し、戦国時代の天皇のあり方を検討し、リブレット『戦国時代の天皇』(近刊)をまとめた。 ④特定の人物の書状の収集:量的には三条西本の紙背文書に残されたものを中心として、若狭武田氏や大内氏の被官の手になる書状を探索し、そこからうかがえる戦国武士の文芸活動について検討をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項に記したとおり、当初の研究実施計画に沿って研究を遂行し、おおむね順調な進捗をみている。ただし、今年度は、論文「双柏文庫の三条西実隆書状」やリブレット『戦国時代の天皇』(近刊)など、紙媒体による成果の公開は、当初考えていた以上に順調にすすんだ。一方で、史料調査やホームページによる情報発信については、当初考えていたところに比して、いささか遅れ気味である。その都度の研究の力点の置き方により、若干の遅速が出ることは当然であって、総体としては、おおむね計画どおりという評価が可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①署名・花押総覧の作成:2018年度中に『実隆公記紙背文書花押署名総覧(僧侶女性編)』の刊行を果たしたい。引き続き、東京大学史料編纂所架蔵『言継卿記』を対象として、同様の作業をすすめたい。 ②女房奉書を中心とする仮名消息の読解のための入門的な自習教材の作成:東京大学史料編纂所所蔵『実隆公記』の貼継文書および紙背文書、あるいは同所所蔵『山科家断簡』などのなかから、適宜の女房奉書や仮名消息を選定して、教材を作成し、研究代表者末柄のホームページで公開を果たしたい。 ③群としての書状・仮名消息の翻刻・検討:禁裏文書および近衛家や三条西家などの旧蔵史料を中心に、翻刻や検討をすすめ、史料紹介や論文のかたちにまとめる。 ④特定の人物の書状の収集:甘露寺親長・三条西実隆あるいは若狭武田氏や大内氏の被官などに加え、細川氏(京兆家)被官の書状などを収集・検討の対象としたい。③・④については、適宜、京都府や愛知県などへの出張を行なうことになる。
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Causes of Carryover |
2017年度は、論文および書籍による成果公開のために多くの時間を割いたことで、史料調査のために十分な時間を割くことが難しかった。そのため、2018年度の助成金と併せることで、複数人数による史料撮影など、相対的に大規模な史料調査に充当することが効率的であると判断した。
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Research Products
(5 results)