2018 Fiscal Year Research-status Report
女院からみる中世王権の特徴―院号宣下の背景と経緯の検討を通して―
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17K03074
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Research Institution | Maebashi Kyoai Gakuen College |
Principal Investigator |
野口 華世 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 准教授 (40634647)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 女院号宣下 / 王権 / 院 / 皇嘉門院 / 建礼門院 / 殷富門院 / 七条院 / 宣陽門院 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究について、1の史料蒐集に関しては、八条院・建春門院・建礼門院・殷富門院・七条院・宣陽門院の史料蒐集を実施した。基本的には東京大学史料編纂所架蔵謄写本「院号定部類記」(架蔵番号2057-153)の翻刻が中心となっているが、東山御文庫所蔵本に同系統の写本があるとわかり、そちらを底本とすることとなった。「院号定部類記」の翻刻は当該年度分の建礼門院・殷富門院・七条院・宣陽門院については進み、ほぼ完了に近い状況である。また昨年度、「院号定部類記」に未収載とわかった皇嘉門院についても、東京大学史料編纂所データベースを用いて史料蒐集を行った。これらの翻刻や史料蒐集は、活字化されていないものも多く、まとまった形式で見ることができないので、今後の研究において非常に意義あるものとなる。 また、未刊行史料博捜に関しては、「院号定部類記」と同様の史料原本や写本を探すために、尾張の蓬左文庫において史料調査を行った。関連する史料の蒐集を実施した。だが、今のところ蔵書検索システムで拾えるものは限りがあったので、できれば再調査が必要であることが判明した。さらに京都大学総合博物館の所蔵文書の調査も実施し、関連史料の蒐集を行った。京都大学総合図書館についても、全ての史料調査を終わらせることができなかったので、再度の調査が必要である。 2の史料分析、史料蒐集や「院号定部類記」の翻刻が進んだ女院については、基礎的情報を収集することができ、基礎的情報の整理・検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究のうち、1史料蒐集については、特に「院号定部類記」の翻刻に関して、底本とすることになった東山御文庫所蔵本は、東京大学史料編纂所にマイクロフィルム版があるのだが(勅封258-2-1~10)、閲覧は可能であるが、閲覧方法が限られているため、なかなか時間を取ることが難しく、作業が遅れがちとなってしまった。 2史料分析に関しても、史料が揃わないこともあり、基礎的情報の収集・整理・検討を全ての女院について着手することができなかった。 1については、資料整理のアルバイトを増やしたが、専門知識の提供を依頼した人が多忙により、なかなか予定通りに進まなかった面もあった。 以上により、本研究はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度に終えるべきであった「院号定部類記」の翻刻、八条院・建春門院などの翻刻を速やかに終わらせる。また底本を東山御文庫所蔵本としたため、閲覧方法が限定されるが、それについては資料整理のアルバイトやその時間数を増やして対応していく。本年度前半で全翻刻は目処をつける。その他、未刊行史料についての調査もできる範囲で行う。 また同時並行で史料分析を行う。これまでの基礎的情報の収集・整理をもとに、史料分析としての基礎的情報データベースの作成を速やかに行っていく。以上の史料蒐集・史料分析をもとに、各女院の院号宣下時の状況を検討・分析する。 以上の研究結果について、報告書を作成し公表する。また可能なものに関してはweb上でも公表していく。
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Causes of Carryover |
今年度は、最終年度であるため、昨年度実施しきれなかった1史料蒐集を行い、2史料分析を進める。また、これらの3研究成果公表を行うために、以下のように研究費を使用する計画である。 1史料蒐集については、「院号定部類記」の翻刻のため女院研究会のメンバーである研究協力者やその他資料整理協力者や院生に依頼し必要に応じて謝金を支払う。また既刊史料を利用するために史料集を購入する。以上の翻刻の状況や情報を共有するため、会議や研究会を開催する。最終的な未刊行史料の博捜として、京都大学総合博物館などで史料調査を実施する。会議や研究会における旅費や、史料調査のための旅費が必要となる。蒐集した史料の整理を研究者や院生に依頼する場合は謝金を支払う。 2史料分析についても、基礎的情報の収集とデータベース作成において女院研究会のメンバーである研究協力者や院生に依頼した場合には謝金を支払う。女院への院号宣下は当該期王権に何を求められてであるのか、王権の日本的特徴とはどのようなものかということを考察するために、当該期王権に関する研究書を検討したり、研究協力者である伴瀬明美氏が主催する「東アジア后位比較史研究会」にも参加する。ついては研究書の購入、研究会参加の旅費としての支出がある。さらに3研究成果の公表として、翻刻史料の活字化や基礎的情報データベースなどの公表のため、研究成果報告書などの作成費が必要となる。
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Research Products
(3 results)