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2018 Fiscal Year Research-status Report

地域社会における陰陽道および民間信仰の多元的な派生・展開に関する研究

Research Project

Project/Area Number 17K03080
Research InstitutionSetsunan University

Principal Investigator

赤澤 春彦  摂南大学, 外国語学部, 准教授 (90710559)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords陰陽道 / 陰陽師 / 安倍晴明 / 陰陽道祭祀 / 病 / 物気 / 安倍泰親
Outline of Annual Research Achievements

2018年度は日本中世における陰陽道の展開を2つの側面から検討した。
1つは中世社会における陰陽道の役割である。その具体的な対象として、病とそれに対する陰陽師の行った治療と取り上げた。前近代社会において病は個人の関心が最も高い事象の1つであった。人々は病に対して様々な処置を求めたが、おもに医師による投薬・治療、仏教僧による加持・祈祷、そして陰陽師による呪術が病に対する治療行為として行われた。本研究では陰陽師が行った治療行為である陰陽道祭祀について院政期から室町期までを対象に史料を収集し、総体的な把握を試みた。その結果、院政期から鎌倉中期にかけて「数多く」、「多種多様に」、「多数の陰陽師を動員して」行われるようになること、その中心となったのが五行家系の鬼気祭、土公祭と道教神系の泰山府君祭であるが、病状や病因によって執行する祭祀をわけていたこと、さらに一二世紀末から一三世紀中頃にかけて密教祈祷を意識した道教星神系の祭祀が盛んに行われるようになること、鎌倉末期以降、急速に減少してゆき、室町期には病に万能の功験を持つ祭祀として泰山府君祭に収斂されてゆくことを明らかにした。また、病因の一つとして考えられていた物気(モノノケ)に対する陰陽道のかかわり方が院政期以降変容することも新たに発見した。
もう1つは中世における安倍晴明伝説の展開についてである。検討の結果、晴明伝承の形成には晴明の5代後胤にあたる安倍泰親の影響が大きいこと、晴明伝承に泰親伝説が上書きされてゆく動向が見て取れること、民間陰陽道の派生、展開を考える上で、15世紀以降、新たな晴明伝説が形成されてゆくこと、そしてそれは禅宗の教線拡大と関わる可能性があることを明らかにした。
これらについては4回の研究報告の場で発表した。以上の成果により、中世社会に陰陽道が展開してゆく諸要因について重要な事実を解明することができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績で述べたように陰陽道の地域的派生・展開を研究するうえで重要な論点に取り組み、成果を上げることができた。陰陽道の社会的需要を考える上で、陰陽道が社会に求められた役割を考えることは重要な視角となる。2018年度はその具体的な素材として病とそれに対する治療を取り上げた。人類にとって病は普遍的、超時代的な課題であるが、前近代社会において陰陽道が病に対していかなる対処をしていたのかを明らかにできた意義は大きいと考える。
また、陰陽道が朝廷の賀茂氏・安倍氏が管掌する「陰陽道」から民間の宗教者が扱ういわゆる「民間陰陽道」へと派生してゆく過程で重要な役割を果たしたのが安倍晴明をめぐる言説や伝承であることも明らかになった。こうした晴明説話がいつ、だれの手によって、どのように展開したのか、また民間陰陽師たちはこうした言説をどのように自らの由緒や宗教政界の構築に利用したのかについては今後の課題となるが、そこに至るまでの大筋の道筋を描き出すことができた。
なお、2018年度に発表した成果については2019年度に論文として発表する予定である。

Strategy for Future Research Activity

今後の課題として、以下に挙げる3点を中心に取り組む予定である。
まず、1つめは安倍晴明伝承の地域的展開についてである。すでに高原豊明によって日本各地の晴明伝承については網羅的に検討されているが、これらの事例を個別に検討し、中世に遡る可能性のあるものを抽出して、その生成過程や展開について検討を進めたい。晴明説話がいつ、だれの手によって、どのように展開したのか、また民間陰陽師たちはこうした言説をどのように自らの由緒や宗教世界の構築に利用したのかについて明らかにすることによって、近世陰陽道への接続あるいは断絶の側面を浮き彫りにできるだろう。
2つめは安倍晴明伝説とは異なる要因で発生、展開した陰陽道、あるいは陰陽道的思想の検討である。日本における陰陽道の展開は何も晴明一人に収斂されるわけではない。当然、これと関わりなく展開したものも存在する。こうした事例の1つとして宇佐の陰陽師を挙げることができるが、他の類例を探し出して検討する。
3つめは他の宗教との関係について検討する。とりわけ、陰陽道との習合が顕著な密教との関係については研究史上でも重要な論点となっている。こうした問題について寺社を基盤に活動を展開した陰陽師の活動に焦点を当てて検討する。また、思想的な側面での関係性だけでなく、陰陽師の競合者として院政期以降台頭する宿曜師を取り上げて検討する。

  • Research Products

    (5 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results)

  • [Journal Article] 中世社会と暦2018

    • Author(s)
      赤澤春彦
    • Journal Title

      歴博

      Volume: 210 Pages: 8

  • [Presentation] 院政期・鎌倉期におけるモノノケ・病気治療と陰陽道2018

    • Author(s)
      赤澤春彦
    • Organizer
      東アジア恠異学会第118回定例研究会
    • Invited
  • [Presentation] 日本中世における病・治療と陰陽道2018

    • Author(s)
      赤澤春彦
    • Organizer
      国際シンポジウム 東アジアの歴史における病気治療と呪術
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 中世における安倍晴明像の再生産2018

    • Author(s)
      赤澤春彦
    • Organizer
      第6回陰陽道史研究の会
  • [Presentation] 安倍晴明伝承の展開と陰陽道の呪術2018

    • Author(s)
      赤澤春彦
    • Organizer
      2018年度摂南大学国際教養セミナー

URL: 

Published: 2019-12-27  

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