2018 Fiscal Year Research-status Report
Islamic Education of the Zawiyas and Its Ideological Influence on the Algerian Independence War
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17K03143
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
私市 正年 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80177807)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イスラーム教育 / ザーウィヤ / ナショナリズム / スーフィー教団 / アルジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って以下のことを実施した。 1.al-Ruh紙におけるイスラーム教育の内容を分析し、それが青年たちの思想形成(とくにナショナリズム思想)に与えた影響を考察した。アルジェリアのスーフィズム研究者Foued Kasimiと意見交換をし、フランス植民地期のZawiya al-Hamilにおける教育内容と科目についての新しい知見を得た。2018年11月、アルジェリアに調査出張し、Msilaで開催されたZawiyaの研究集会においてZawiyaのイスラーム教育と独立運動についての発表を聴いた。また、アルジェのGlycinesセンターにおいて、「al-Ruh紙とアルジェリア・ナショナリズム運動の再考」というテーマで報告を行った。 2.2018年6月、シチリアに出張し、パレルモの図書館にてイスラーム期パレルモにおける伝統的なイスラーム教育についての基礎的な調査を行った。 3.スーフィー教団系の新聞の分析を開始し、Zawiyaでのイスラーム教育がアルジェリア人のナショナリズム思想に与えた影響について史料調査を行った。扱った新聞は、Lisan al-Din紙、al-Balagh al-Jaza’ir紙、al-Rashad紙、al-Murshid紙、al-Dhikr紙である。 4.これらの研究と調査結果をふまえて、研究会「植民地期アルジェリアにおけるウラマーとスーフィー教団再考:社会経済的変容と政治文化的思想」(2019年1月20日(日)・上智大学)を開催し、「アルジェリアの民族国家の形成―ザーウィヤの活動とウラマー協会の活動の補完関係 」と題する研究報告を行った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Zawiyaでのイスラーム教育には、コーランやスーフィズムだけでなく、道徳や倫理にかかわる問題、アラブの歴史やパレスティナ問題にかかわるテーマも含まれていた。またキリスト教徒宣教師の活動を目にしていたムスリムにとって、改宗問題は植民地支配に対する政治問題と直結していた。これらの問題は、今後より詳細に具体的に分析する必要がある。 2.シチリアにはイスラーム期に多くのモスクが建設され、ウラマーの活動も活発であった。ウラマーの移動を介して、シチリアが、アンダルス・マグリブ・マシュリクとどのような関係を築いていたかについては部分的にしか考察できなかった。 3.スーフィー教団系の新聞の分析によって明らかになったことは、新聞がフランス支配に対しては容認する立場をとりながら、パレスティナ問題ではアラブ・イスラームへの強い共感と支持を示し、イタリアの植民地化に抵抗するリビアのオマル・ムフタールに無制限の支持を表明するというダブル・スタンダードの姿勢をとったことである。アルジェリア人たちはダブル・スタンダードの矛盾をすぐに見抜いただろうし、その矛盾から、アルジェリア民族意識の覚醒と独立への方向性を見出していったことが考えられる。これについてはより詳細な分析を行うつもりである。 4.エクサン・プロバンス文書館の資料(Confreries religieuses en Algerie, 1951 その他)を分析し、植民地期アルジェリアにおけるZawiyaの分布を、19世紀末から1950年代まで跡づける作業を行った。イスラーム教育との関連は不十分であったので今後この問題にとりくむつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Zawiyaでのイスラーム教育がアルジェリアの独立運動に与えた影響について、新聞資料を使って、アラブの歴史やパレスティナ問題、キリスト教徒宣教師の活動、ムスリムの改宗問題などについてより詳細に具体的に分析する。 2.スーフィー教団系の新聞がアルジェリアのフランス支配に対しては容認する立場をとりながら、パレスティナ人の戦いやリビアにおけるオマル・ムフタールの反乱に対しては、強い共感と支持を表明した。アルジェリア人たちはこのダブル・スタンダードの矛盾をすぐに見抜いただろうし、その矛盾から、アルジェリア民族意識の覚醒と独立への方向性を見出していったことが考えられる。この問題についてより詳細な分析を行なう。 3.エクサン・プロバンス文書館の植民地資料を分析し、植民地期アルジェリアにおけるZawiyaの分布を跡づける作業を行なう。
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Causes of Carryover |
当初、予定していたアルジェリアでの調査がビザの関係で難しくなったことと、スーフィー教団系新聞の分析が予定よりも時間がかかりこれを優先したこと、この二つの理由でアルジェリア出張をとりやめたため、この分の予算を次年度にまわした。これは2019年度にアルジェリアおよびフランスへの調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)