2020 Fiscal Year Research-status Report
Islamic Education of the Zawiyas and Its Ideological Influence on the Algerian Independence War
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17K03143
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
私市 正年 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80177807)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スーフィー教団 / ザーウィヤ / ナショナリズム / アルジェリア / イスラーム教育 / モロッコ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って以下のことを実施した。 (1)アルジェリアにおける植民地期のイスラーム教育とナショナリズム運動の関係を比較考察するため、モロッコの植民地期史料、Allal al-Fasiの著作集(Hadith al-Maghrib fi al-Mashriqなど)と、Muhammad DaoudのTarikh Tituan(ティトゥアン史)を読解、分析した。またAbdalla LarouiのLes origines sociales et culturelles du nationalisme marocaineを読み、モロッコにおけるナショナリズム運動におけるウラマーとザーウィヤ、マラブーとの関係を整理した。(2)昨年度からの継続的研究として、収集した新聞資料の中から、スーフィー教団・ザーウィヤにおける「政治的ダブルスタンダード」の立場に関する記事の分析を行った。また道徳や教育に対する反植民地運動をナショナリズム運動の文化的側面としてとらえる視点から、al-Balagh紙の記事の読み直しを行った。その分析と考察の成果は、論文としてまとめ日本中東学会年報に投稿すべき準備を行った。(3)Shuhada mintaqa al-Awlasの史料分析により、独立運動の戦闘員の中にザーウィヤやモスクのコーラン学校で学んだ者が多いことが確認された。これは、イスラーム教育が独立運動に与えたイデオロギー的影響を分析するための重要な手掛かりになると考えている。(4)2018年に実施したシチリアでの調査成果をまとめ、世界歴史大系『イタリア史』古代・初期中世1(山川出版社・2021年3月)に「アラブ人のシチリア」として公刊した。
なお予定していた海外調査はコロナ感染の広がりのため実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.スーフィー教団が発行していた主要な新聞資料を入手し、オンライン等を通じてアルジェリア、およびモロッコの研究者と意見交換しながら読解をすすめることができた。 2.入手した新聞資料の中から、道徳や倫理に関わる記事と政治に関わる記事を抽出し、考察を進めた。しかし、記事の量は多く、時間的な関係と記事内容の難解さのゆえに分析作業は80%程度に留まっている。オーレス地方出身者の独立戦争における戦死者人名辞典(Shuhada mintaqa al-Awras,vols.1-2)を分析し、彼らのザーウィヤやコーラン学校での就学経験がジハード意識の形成に一定の役割をはたしていたのではないか、という見通しを得た。 3.al-Ruh紙の分析をすすめ、日本中東学会の機関誌に論文「Anticolonialisme et tendance politique de tariqas soufies et zawiyas en Agerie」を投稿し、採択・掲載が決まった。こうしたことからも、本研究がほぼ順調にすすんでいると判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)収集した新聞の記事を分析整理し、それが教団員たちが独立運動に向かう上でいかなるイデオロギー的影響を与えたのか、という問題について分析を行う。 (2)日本中東学会の機関誌に掲載が決まった論文「Anticolonialisme et tendance politique de tariqas soufies et zawiyas en Agerie」を今年度中に刊行する。 (3)Allal al-Fasiの著作の分析からえられた、モロッコのナショナリズム運動とイスラーム教育との関係を、アルジェリアのそれと比較することで、イスラーム教育が独立運動に与えた影響を比較史的に明らかにする。 (4)今後はスーフィー教団が発行していた新聞を、アルジェリア以外にも広げて研究を継続したい。
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Causes of Carryover |
2020年度(2021年3月末)をもって本事業は終了予定であったが、コロナ感染の拡大のため当初予定していた海外調査ができず、本事業の研究のとりまとめのために1年間の延長が必要となった。なお補助事業期間再延長は日本学術振興会より承認されております。 予算は、ハーミルの文書館資料とal-Rashad紙の複写費、および複写した新聞と、al-Ruh紙の読み方と分析のために助言を依頼する専門研究者(Foued Kacimi氏とJamila Blouh氏を予定)への謝金として使う予定である。これら三つの資料の分析によって、ザーウィヤのイスラーム教育が独立運動に与えたイデオロギー的影響をまとめ、本事業の成果をAJAMES等の雑誌に投稿する論文執筆にとりかかる。
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Research Products
(3 results)