2018 Fiscal Year Research-status Report
The remembrance of the fallen of the First World War and the local communities in Britain
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17K03177
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
吉田 正広 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10284382)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス / 第一次世界大戦 / 戦争記念碑 / ロンドン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ロンドンにおける第一次世界大戦の戦死者追悼記念碑や式典のあり方を、企業、地域社会、国民国家さらに帝国に至る重層的なアイデンティティ形成の問題として位置づけるとともに、記念碑の様式や式典のあり方にコミュニティ毎の違いがあることに着目し、地域社会の特質や政治との関連で記念碑や式典を考察するものである。 今年度は、シティに勤める職員層の住宅地としてのロンドン東部郊外住宅地(具体的には、イルフォード、ウォンステッド、ウッドフォード)の調査を行い、そこにおける戦争記念碑や追悼式典の特徴について調査した。1920年代に開発が行われた郊外住宅地には、ロンドン・シティの金融機関等に勤める職員たちが住居を購入して鉄道で職場に通勤した。このような当時の新興の郊外住宅地において特に戦死者追悼活動が盛んであったことが現地調査によって改めて確認でき、また、現在においてもその伝統が引き継がれていることが明らかになった。これに関連してイルフォードにあるRedbridge Libraryにおいて、今回調査した記念碑のあるコミュニティーの地方史関係文献を閲覧し、関係情報を入手した。 今回のロンドン調査を補足するため、国会図書館新聞資料室において2018年度の戦死者追悼式典が行われた11月11日前後のThe Timesの関係記事を調査し、収集した。 今年度の調査および研究の成果として、愛媛大学法文学部で刊行した『多文化社会研究』第6号(2019年3月)に「ロンドン北東部郊外住宅地における第一次世界大戦の戦死者追悼―イルフォード、ウォンステッド、ウッドフォード―」を公表した。また、ホームページを立ち上げ、本研究の成果をインターネットを通じて公表した。http://hist.ll.ehime-u.ac.jp/
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年12月24日~2019年1月2日に、予定どおりロンドンの現地調査を実施した。今回の調査では、第一に、ロンドン市の中心にあるユーストン駅の戦争記念碑がこの1年で修復され、銘文の復元がなされたこと、11月11日の追悼式典の際に捧げられたポピーの花輪が残されており、それらの画像を収集した。 第二に、ロンドン東部の郊外住宅地における第一次世界大戦の記念碑の調査を実施した。イルフォード、ウォンステッド、ウッドフォードの三つの戦争記念碑について、2018年11月11日の追悼式典で捧げられたポピーの花輪、それに付されたメッセージと団体名について、画像に納め、基礎資料を収集した。第三にレッドブリッジ図書館で、今回調査した記念碑のあるコミュニティの地方史関係文献を閲覧し、関係情報を入手した。 2019年3月22日~23日に国立国会図書館新聞資料室において、今回のロンドン調査を補足するために、2018年度の戦死者追悼式典が行われた2018年11月11日前後のThe Timesの関係の記事を調査し、収集した。さらに、第一次世界大戦百年記念に当たる2014年から2018年までの5年間に及ぶ11月11日前後のThe Timesの戦死者追悼関係記事を収集した。これは、第一次世界大戦百周年に当たる間の追悼式典の推移を整理し、本研究の現代的意義を再確認するものである。 今年度の調査および研究の成果としては、愛媛大学法文学部で刊行した『多文化社会研究』第6号(2019年3月)に「ロンドン北東部郊外住宅地における第一次世界大戦の戦死者追悼―イルフォード、ウォンステッド、ウッドフォード―」を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
【2019年度】ポプラー、ハックニーなどイースト・エンドのコミュニティーにおける戦死者追悼の実態を調査する。1980 年代以降の再開発の結果現在は世界各 国の金融機関の高層ビルが立ち並ぶドックランド地区を含むポプラーの現状と、当時の様子を表すかつての市庁舎、子どもの死者の記念碑があるポプラー・レク リエーション公園の周辺を調査し、現在のコミュニティーのあり方を観察すると同時に、当時のコミュニティーのあり方を復元する。とくにこの地区が伝統的に 労働党が強く、現在でも多様な民族の居住する多文化主義的な地域であることに着目し、戦争記念碑のあり方の特質を探る。 【2020年度】最終年度はセノタフの位置づけの再検討を通じて戦死者追悼とアイデンティティ形成の重層性、「戦死者追悼の政治学」、福祉国家との関連性につ いて方向性を検討する。
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Research Products
(1 results)