2017 Fiscal Year Research-status Report
磨製石斧と鉄器を中心とした弥生時代の西日本と北日本との流通・交流関係の解明
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17K03203
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐藤 由紀男 岩手大学, 教育学部, 教授 (00552613)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 層灰岩製片刃石斧 / 鋳造鉄斧の再加工品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の具体的目的は、弥生時代及びその並行期における九州北部製の層灰岩製片刃石斧、北海道製の緑色片岩製石斧、北海道及び東北北部製の三面石斧の流通の様相を明らかにすることと、当該期の東北北部・北海道の鉄器流通を明らかにすることである。 前者については佐賀県吉野ヶ里町吉野ヶ里遺跡、愛媛県松山市岩崎遺跡、同県西条市大久保遺跡・阿方遺跡、三重県津市納所遺跡、島根県益田市羽場遺跡、同県浜田市鰐石遺跡、同県出雲市矢野遺跡、京都府京丹後市扇谷遺跡、同府与謝野町蔵ヶ崎遺跡において層灰岩製片刃石斧の確認調査を実施し、その流通状況の把握に努めた。また新潟県新潟市鳥屋遺跡、同県阿賀野市猫山遺跡、同県糸魚川市大塚遺跡、同県上越市和泉A遺跡、同県三条市上野原遺跡において緑色片岩製石斧と三面石斧の確認調査を実施し、その流通構造の把握に努めた。 後者については東北北部・北海道の調査に先立ち、愛媛県西条市大久保遺跡の鉄製品と愛知県清須市朝日遺跡の鉄製品による加工痕が観察される骨角器の調査を実施した。大久保遺跡の鉄製品調査により、北海道苫小牧市タプコプ遺跡出土の鉄製品が大久保遺跡と同様の鋳造鉄斧の再加工品である蓋然性が高まったため、当該鉄製品のX線撮影を実施し、微細な空隙を確認した。これにより当該鉄製品が鋳造鉄斧の再加工品であることが判明した。また鉄流通に関係する資料として青森県むつ市二枚橋遺跡出土の青銅製品や同県田舎館村垂柳遺跡出土のイモガイ製貝輪の模倣品の観察も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に層灰岩製片刃石斧の基礎的な観察を行うことができた。また北海道苫小牧市タプコプ遺跡の鉄製品のX線撮影を当初の計画どおりに実施することができた。しかし北海道における骨角器の鉄製品による加工痕にかかわる調査を所蔵機関ほかの事情により実施することができなかったため、計画以上の進展ではなく、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究費の申請時には九州北部製の層灰岩製片刃石斧や北海道製の緑色片岩製石斧については、原石も含めた蛍光X線分析装置による元素分析を計画していたが、経費の減額により十分な調査を実施することが難しくなってしまった。一方、高倍率のデジタル顕微鏡を用いた石器の使用痕研究を推進している愛知県教育委員会文化財保護室の原田幹氏に、北海道北斗市茂別遺跡出土石器に残された鉄の整形痕と推定される溝条痕の観察と類例調査を実施していただけることになった。これにより当該石器と鉄との関係をより詳細に考察することが可能となり、当該研究をより推進することができる。当初に計画していた蛍光X線分析装置による元素分析を、デジタル顕微鏡による使用痕研究に変更する。
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Research Products
(4 results)