2017 Fiscal Year Research-status Report
The Basic Study on Trading of Asian Ceramics in Northern Europe
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17K03214
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高島 裕之 専修大学, 文学部, 准教授 (30583819)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スウェーデン・イェーテボリ号 / 中国瓷器 / 日本磁器 / 中国景徳鎮窯 / 日本有田窯 / オランダ・フローニンゲン博物館 / 東インド会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,北欧における陶瓷器受容の様相について正確に把握し,アジア産貿易陶瓷器が運ばれた実態を明らかにすることを目的としている。わが国では本格的な研究の少ない北欧を主なフィールドとして,17 世紀,18 世紀のアジア産貿易陶瓷器を中心に,流通遺跡,消費遺跡の個々の資料の特徴を抽出し,他のヨーロッパ地域,特にオランダと照射しながら,受容者の要求とそれに答えた生産者の意図を読み取る。 具体的にはアジア産貿易陶瓷器を対象に,受容者の嗜好, 流通経路,地域性,嗜好に合わせ作られた陶瓷器製作技術の本質を明らかにするための資料調査を行なう。実物資料に悉皆的にあたり,種類,器種,成形,素地,施釉,装飾,窯での焼成状況,使用痕の有無などを記録した実測図や写真撮影を伴なう調書作成が原則である。そして地球的規模で行なわれたアジア=ヨーロッパ間での交易を明らかにする新視点について,具体的な資料を基に提示し,アジア産貿易陶瓷研究を深化させる。 2017年度はスウェーデン・イェーテボリ号陶瓷器資料の調査を進めた。1745年にイェーテボリ沖で沈んだスウェーデン東インド会社の交易船,イェーテボリ号の発掘調査資料は,イェーテボリ海洋博物館が所蔵している。この資料については日本でも知られていたが,全体像は把握されていなかった。予備調査の段階で,全体で5tと膨大な量であることが解ったため,まず1次調査としてその種類を把握し,産地同定を正確に行ない,実測図作成を進め,個々の陶瓷器資料の特徴を記録した。さらに海洋博物館より,1986年~1992年に行なわれた詳細な発掘調査に関するレポートを入手することができた。 また,オランダ・フローニンゲン博物館の所蔵するオランダ東インド会社のヘルデルマルセン号(1752年沈没)の陶瓷器資料の調査を進め,北欧地域の陶瓷器受容の地域性を明らかにするうえでの良好な比較資料を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スウェーデン・イェーテボリ号の陶瓷器資料調査の成果は,次のとおりである。まず1点確認されている日本の有田染付皿について,内底全体に擦傷がみられ,交易品ではなく船内の使用品であることを確認した。また出土陶瓷器に関しての文献,“Porcelain from the East Indiaman Gotheborg”には掲載されていない中国宜興窯の茶銚(急須)蓋,中国南部産の青花碗,青瓷碗,コンテナ容器としての褐釉陶器など,流通の遺跡としてのイェーテボリ号を復元する新たな具体的資料を入手することができた。さらにオランダ・フローニンゲン博物館のヘルデルマルセン号の資料と比較することで,イェーテボリ号の中国景徳鎮窯瓷器の種類が少なく,喫茶に関わる器種やプレートに限定される可能性が予察できた。 今回の成果について,2018年5月の日本考古学協会第84回総会研究発表に応募し,「スウェーデン・イェーテボリ号出土陶瓷器の新知見」の題でポスターセッション発表を行なう形でまとめることができたため,研究全体を通して概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度にも引き続き,スウェーデン・イェーテボリ号の陶瓷器資料の調査を行なう。“Porcelain from the East Indiaman Gotheborg”に実測図の掲載されていない資料について,図作成をすすめ,調査を完了する予定である。また詳細な発掘調査に関するレポートを入手したため,資料の考察を深化させていく。さらにイェーテボリ市内の発掘調査資料も視野に入れながら,イェーテボリ地域の陶瓷器受容の地域性について,基礎的理解を進める。 2019年度には,デンマーク・コペンハーゲン市内出土陶瓷器資料の調査を計画する。現在コペンハーゲン博物館が改装中であり,2018年度は可能な限りの連絡調整を進める予定である。 また研究資料の全体像を補い,北欧のアジア産貿易陶瓷器受容の特質を描き出すために,オランダ・フローニンゲン博物館での陶瓷器資料調査を継続する予定である。
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Causes of Carryover |
資料費,資料整理用消耗品費が残額となった。2018年度の北欧現地調査旅費の一部として使用する予定である。
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