2018 Fiscal Year Research-status Report
衛星画像のGIS分析による隋唐都城とシルクロード都市の空間構造の比較考古学的研究
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17K03218
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
城倉 正祥 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (90463447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 慎二 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (00609901)
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (20617469)
山内 和也 帝京大学, 付置研究所, 教授 (70370997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東アジア都城 / シルクロード都市遺跡 / キルギス共和国 / アク・ベシム遺跡 / 三次元測量 / 地中レーダー探査(GPR) / GIS / 設計原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、東アジア都城とシルクロード都市遺跡の考古学的構造比較を目的とする。研究初年度の2017年度には、キルギス共和国に位置する唐代の都市遺跡、アク・ベシム遺跡の測量・GPR調査を予定していた。しかし、地形測量用機材の現地持ち込み許可や、現地での調査許可を2017年度中に取得することができず、当初の計画を変更して、2017年度は日本国内において衛星画像を用いた分析作業を蓄積した。その間、キルギス共和国での調査準備を進め、研究2年目の2018年度に測量・GPR調査を実施した。2018年度の研究内容と成果の大きな部分は、この測量・GPR調査が占めるため、以下に詳述する。 キルギス共和国アク・ベシム遺跡は、シルクロードの世界遺産にも指定されている都市遺跡である。ソグド人の都であるシャフリスタンに関しては、ドイツのアーヘン大学による詳細な測量図が存在するが、唐の砕葉城と目されるラバトに関しては、現在まで測量図が存在していない。研究代表者である城倉は、高精度衛星画像を用いたGISの分析でその構造を復元したが、精度の高い測量図の作成が急務となっていた。そのため、2018年10月25日~11月8日の期間、本科研費を使用して8人で現地に渡航、高精度の三次元測量・地中レーダー探査を実施した。三次元測量では、早稲田大学文学部考古学コースが所蔵する3DスキャナーGLS2000を用いて高精細の測量を実施した。また、地中レーダー探査(GPR)では、同じくMALA社のproEXを用いて、城壁を探査した。以上の調査によって、従来には存在しなかったラバトの高精細な測量図と城壁の位置を示すレーダー反応を取得することができた。 唐代砕葉城の構造とその歴史的意義については、いまだ不明な部分が多い。今回の調査で、初めて今後の学術的な研究の基礎となる測量図が作成できた点は、非常に大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の遂行に際しては、2017年度のキルギス共和国アク・ベシム遺跡の測量・GPR調査が大きな位置を占めていた。しかし、昨年度の報告でも記載したように、2017年度中には三次元地形測量をするための機材の持ち込み手続き、さらには現地での調査許可を得ることが難しく、やむを得ず、研究計画を変更した。そのため、1年目の計画と2年目の計画を入れ替えて、2017年度には日本国内におけるGISを用いた衛星画像の分析に集中することにし、同時に、現地での調査許可を得るための準備を進めた。 研究分担者である山内和也氏、山藤正敏氏と相談をして、現地機関である国立科学アカデミーと準備を進め、機材の持ち込みと現地調査の許可証を取得することができたため、2018年度にはキルギス共和国での測量・GPR調査を実施することができた。2018年度には、早稲田大学文学部考古学コースが所蔵する3Dスキャナー、地中レーダー探査の機材一式をキルギス共和国に持ち込み、高精度の測量・GPR調査を実施することができた。本調査は、本研究課題の大きな部分を占める作業であり、現地調査によって地形測量情報が取得できた点は大きな前進だった。 以上のように、2017年度と2018年度の研究計画を入れ替える予期しない対応になってしまったが、2年間の研究実施によって、ほぼ本来の計画通りの進展を得ることができた。なお、2018年度調査のデータの解析は、GISとGPRのソフトウェアを用いて進めているが、2018年度中には完成していないため、2019年度以降にも引き続き行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、2017年度と2018年度の研究内容を入れ替えることになったが、おおむね順調に進んでいる。そのため、研究3年目以降は本来の研究計画通りに遂行する予定である。 まず、研究3年目の2019年度は、中国新疆ウイグル自治区に位置する北庭故城、高昌故城の分析と現地踏査を実施する予定である。なお、2019年度は、代表者の城倉が採択されている科研費(国際共同研究加速基金)により、中国社会科学院考古研究所で客員研究員として研究に従事しているため、現地踏査を実施しやすい環境にある。一方で、現在、新疆ウイルグル自治区では、治安上の問題などもあり、現地活動が難しい局面も予想されるため、その場合は、衛星画像の分析などを重視して研究を進める予定である。また、2018年度に実施したキルギス共和国アク・ベシム遺跡の三次元測量・GPR調査の取得データについても、ArcGIS、GPRsliceなどのソフトウェアを用いて解析を進める予定である。 研究最終年度である2020年度には、現在までの分析・調査成果を総括する。高昌故城、北庭故城の衛星画像の分析成果、およびアク・ベシム遺跡の測量・GPR調査の成果を総括し、東アジア都城との比較作業を進める。衛星画像の分析や現地調査によって膨大なデジタルデータが蓄積されており、その比較分析には多くの労力がかかることが予想できる。そのため、デジタルデータを効率的に分析しつつ、デジタル報告書の編集作業を同時進行し、研究4年目の2020年度末にデジタル報告書を刊行する予定である。報告書の刊行によって、本研究を総括し、その成果を広く発信したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2018年度は2017年度に予定していた調査を実施したため、2017年度からの繰り越し金額が大きかった。そのため、細部の支出変更などが生じ、次年度使用額が生じた。しかし、調査費全体の中では少額のため、2019年度と合わせて、衛星画像の購入、中国での現地調査費に充てる予定である。
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