2018 Fiscal Year Research-status Report
縄文文化の現代的利用におけるローカリティとナショナリティの節合様態の人類学的研究
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17K03287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (50183934)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 先史文化 / 縄文文化 / ローカリティ / ナショナリティ / 世界遺産 / オリンピック / 現代アート |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.「堀江武史作品展 縄文遺物と現代美術―考古学から生まれるアート」(農と縄文の体験実習館なじょもん、新潟県津南町)の実態調査:①[2018.5.3-5.5]文化財修復家兼アーティストの堀江武史氏(府中工房)の個展、ギャラリートーク、ワークショップ「服を土偶に」を調査し、アート作品の制作と展示を通じて、各地の遺跡の出土品を(考古学標品としてではなく)活用する試みについて具体的な資料を得ることができた、②同氏および石原道知氏(武蔵野文化財修復研究所)との現地における討議を通じて、縄文文化の現代的利用の現状を把握するともに、そこに潜む問題点について認識することができた。③豪雪過疎地域に位置する津南町における縄文文化の現代的利用の取組みについて調査した。 Ⅱ.英国における先史文化の現代的利用についての実態調査[2018.5.29―6.6]:①Victoria and Albert Museumにおける縄文土器の展示について調査(5.31)、②研究会議「Art, Materiality and Representation」(British Museum/SOAS, .6.1-3)における、先史美術の人類学的研究の現況についての調査。②Stone Hengeにおける先史文化の現代的利用とくに観光化の実態について実態調査を行った(6.4)、③Tate Modernにおける先史文化と現代アートの交錯についての調査(6.5)。 Ⅲ.「縄文コンテンポラリー展inふなばし」(船橋飛ノ台史跡公園博物館)の実態調査[2018.7.21―23]:①同展の展示およびオープニング(「縄文アートまつり」)の調査。 Ⅳ.特別展『縄文―1万年の美の鼓動』(東京国立博物館)の調査 [7.3] Ⅴ.縄文文化の現代的利用に係る映画の調査:①映画『縄文にハマる人びと』(7.21)、②映画『太陽の塔』(10.8)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:本研究は、日本各地で近年みられる「縄文文化の現代的利用」の急速な活発化の実態について、文化人類学的調査によって具体的かつ詳細に明らかにすることを目的としており、平成30年度には、現地調査としては、国内2地域(千葉県船橋市、新潟県津南町)において、海外1地域(英国ロンドンおよびソールズベリー)において実地調査を実施し、それぞれにおいて充実した調査成果を得ることができた。船橋市における「縄文コンテンポラリー展」を焦点とする調査では、展覧会だけでなく準備段階等の全プロセスに伴走することによって、包括的な理解を得た。津南町においては、縄文遺物と現代アートを主題とする展覧会およびその付帯事業(ギャラリートーク、ワークショップなど)の調査を通じて、ローカルな特色ある取組みについて理解を深めた。英国における調査では、海外における縄文遺物の展示の状況、先史文化の現代的利用の実態等について具体的な知見を得ることができたと同時に、前記の研究集会を通じて、本研究と重なる研究領域の現況をつぶさに知ることができた。それらの調査に加えて、35万人の来場者のあった特別展『縄文』(東京国立博物館)を中心として、「縄文ブーム」とよばれるような盛り上がりを見せた縄文文化への社会的な関心の高まりについて、実施調査およびマスメディア・インターネット等における動向について継続的に調査を行い、予定以上の情報を収集することができた。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)には、マスメディア、インターネット等を通じた情報収集および先史文化の現代的利用についての文献研究を継続することとならんで、以下のように多面的な実態調査を実施する計画である。①「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への国内推薦が決定することが見込まれることを受けて、青森県を中心に、当該縄文遺跡群の構成資産である縄文遺跡における新規の取組みについて実態調査を行う。②「縄文コンテンポラリー展」では、イタリアのアーティストの作品を焦点化する予定であり、先史文化を活用しての現代アートの制作と展示についての日伊の比較を行う。③縄文関係で日本遺産に(長野県とともに)認定された山梨県において、縄文文化の現代的利用の取組みについて実態調査を行う。③加曽利貝塚が国指定史跡となった千葉市における取組みについて、船橋市との比較を視野に入れて調査を行う。なお、本研究の中間報告を書籍のかたちで公表する。
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Causes of Carryover |
平成30年度には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産認定に向けた国内推薦が決定し、それに伴う諸活動が活発化することが見込まれたが、推薦が先送りとなったため、予定していた実態調査も、本年度以降に繰り越しになったことが主たる理由であり、それに加えて、本年度および来年度には、東京オリンピック・パラリンピックに関係しての「縄文文化の現代的利用」動きの活発化が各地で予想されること、さらに、それと並んでブラジルにおける海外調査の実施を予定していることが理由で、昨年度の支出が結果として抑制されることになった。したがって、昨年度予定していた調査を本年度および来年度に繰り越して行うのは、調査対象である社会現象の進捗状況に即してのものであり、調査自体の遅延ないしは停滞を意味するものではない。
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Research Products
(1 results)