2020 Fiscal Year Research-status Report
縄文文化の現代的利用におけるローカリティとナショナリティの節合様態の人類学的研究
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17K03287
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (50183934)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 縄文文化 / 遺跡保存活用 / 地域文化伝統 / 博物館展示 / 陶芸 / ローカリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ 青森県(つがる市/青森市)における縄文文化の現代的利用の実態調査[2020.8.19-8.25]:木造駅舎、つがる市教育委員会、縄文住居展示資料館カルコ、亀ヶ岡先史時代遺跡、木造亀ヶ岡考古資料室において展示・活動について担当者に聴取り調査。亀ヶ岡式土器の復元制作について陶芸家に聴取り調査。青森県立郷土館の展示の調査。三内丸山遺跡センターの新展示および活動について学芸員に聴取り調査。小牧野遺跡保護センターにおいて展示・活動について同館館長に聴取り調査。以上の調査によって、両市における縄文文化の保存活用の実態および直面している問題について詳細な理解を得ることができた。 Ⅱ 岡山県(新見市/備前市)における縄文文化の現代的利用の実態調査[2020.11.13-11.14]:猪風来美術館(新見市)において展示の調査および現代縄文陶芸の制作について陶芸家である同館館長に聴取り調査。備前市立備前焼ミュージアム等において地域文化としての備前焼について調査。両市における実態調査によって、備中備前における縄文文化の現代的利用の実態について知見を深めた。 Ⅲ 新潟県(新潟市、長岡市、津南町、十日町市)における縄文文化の現代的利用の実態調査[2021.3.22-3.27]:新潟市陸上競技場の聖火台について調査。長岡市立科学博物館および馬高縄文館の活動について同館館長に聴取り調査、県立歴史博物館および長岡市内において「未来縄文の杜」の進捗状況を中心に実態調査と関係者への聴取り調査。十日町市博物館において同館副館長と学芸員に新装になった同館の活動について聴取り調査。以上の調査によって「火焔街道」の自治体における縄文文化の現代的利用について理解を深めた。 Ⅳ その他:コロナウイルスのため中止を余儀なくされた「縄文コンテンポラリー展」(船橋市)の準備状況についての調査。先史文化の現代的利用についての文献調査。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、現代日本社会における縄文文化の現代的利用の実態について、文献およびインターネット上の活動も対象とはするものの、主として現地における文化人類学的実態調査にもとづいて明らかにすることを目的としている。そのため、新型コロナウイルスに起因する緊急事態宣言などによる移動制限は、所期の予定通りに実態調査を実施することを著しく困難にした。また船橋市飛ノ台史跡公園博物館における「縄文コンテンポラリー展」をはじめとして、調査を予定していた展覧会が中止になる、さらには博物館資料館等が公開を中止するなど、調査の円滑な実施が困難であった。さらに東京オリンピック・パラリンピックに伴って予定されていた「縄文文化」関係の文化活動が中止されたことによって、ナショナルなレベルでの縄文文化の現代的利用の調査を構想していた通りのかたちでは実施できなかった。 以上のような状況の中、当初の予定を変更することを余儀なくされたものの、必要な改変を行いつつ、縄文文化の現代的利用について、各地の状況について厚みのある理解を得ることができており、コロナ下でむしろ活発化しているインターネット上での博物館展示の公開や縄文ファンの交流活動などについては期待以上の調査を行うことができているため、「おおむね順調に進展している」とまでは言えないものの、調査研究は遅滞することなく着実に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である令和3年度には「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録が実現する見通しであり、東京オリンピック・パラリンピックも開催される予定である。各地の展覧会やイベントなども令和2年度に比べれば復調傾向にある。そうした中、世界遺産登録後の、遺跡の保存活用のさまざまな動きが具体化しつつある状況をはじめとして、未曽有の事態のなかでの各地の取組み状況について、しっかりと調査を行い、5年間にわたる本研究の総括を行い、今後の研究へと発展させることができるよう努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスに起因する移動制限等のため調査を実施できなかったことによる未使用額は、令和3年度に実施予定の国内各地における実態調査のために使用する予定である。
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