2019 Fiscal Year Research-status Report
在朝日本人の土地所有に関する実態分析とデータベースの構築―韓国大邱市を中心に
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17K03288
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
申 鎬 九州大学, 韓国研究センター, 学術協力研究員 (10701469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 朝鮮半島 / 在朝日本人 / 日本統治期 / 大邱市 / 土地台帳 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本統治期に作成された韓国大邱市の旧土地台帳をベースにし、個人レベルでの土地所有に関する具体的な実態を通じて在朝日本人の歴史を記録・解明するという、本課題研究の趣旨に基づき、令和元年度(平成31年度)は以下の研究を実施した。 ①大邱市の旧土地台帳を保管している行政機関(釜山国家記録院、大邱市中区庁、北区庁、南区庁)を訪問し、今年度だけで、以下羅列する20個の行政区域のすべての土地台帳を確保・入手した。東城路1~3街洞(旧東城路町1~3丁目)、西門路1~2街洞(旧本町1~2丁目)、南城路(旧南城町)、北城路街1街洞(旧北城町1丁目)、東山洞(旧市場町)、布政洞(旧上町)、校洞(旧東本町)、華田洞(旧田町)、上西洞(旧上西町)、下西洞(旧下西町)、龍徳洞(旧栄町)、鐘路1街洞(旧京町1丁目)、北内洞(旧北内町)、西内洞(旧西内町)、尚徳洞(旧北旭町)、文化洞(旧南旭町)、壽洞(旧壽町) ②上記の調査から得られた情報をもとに、東城路1-3街洞、西門路1~2街洞、南城路、東山洞、上西洞、下西洞、鐘路1街洞地区をフィールドワークし、現状(建物の保存状態、現在の用度、土地や建物にまつわる出来事及び エピソード、取り壊し時期及び理由など)について調査を行った。 ③また、韓国の国会図書館、大邱市市立図書館、慶北大学図書館、釜山市民図書館、そして日本の国会図書館などを訪問し在朝日本人関連資料を収集し、当時、大邱市に住んでいた在朝日本人や、その子孫の調査を通じて、写真や記録物など個人資料を確保した。 ④以上の研究成果の一部を『旧大邱府居住在朝日本人関連資料集―北城路・太平路地区編―』として作成しており、今後収集した資料を分析・整理しシリーズとして作成し、公開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①韓国大邱市における土地台帳調査は、大邱市の各区庁及び釜山国家記録院(大邱市の旧土地台帳の一部が釜山国家記録院へ移管)の積極的な協力により、令和元年度(平成31年度)だけで20個洞(「洞」は町同様の行政区域)のすべての土地台帳資料を入手した。これで当初目標とした大邱市旧日本人居留地の3/4以上の土地台帳資料を入手している。また、最近韓国の行政機関における行政資料の閲覧条件が厳しくなる傾向があるなか、残りの資料についても、閲覧条件には変化がなく、現在のところ入手には問題ないと予測している。 ②これまでの研究調査により形成された調査協力者や情報提供者(行政の職員、同会(町内会のような組織)、商工会のメンバーなど)の人的ネットワークの積極的な協力により、町のフィールドワーク及びインタビュー調査を広げることができた。また、その人的ネットワークにより地域へのアプローチが容易になり、住民から提供してもらった個人資料(画像、文献資料)を多数確保することができた。一方、大邱市に住んでいた在朝日本人や、その子孫の調査を通じて、写真や記録物などの個人資料をも収集した。 ③予想した以上に資料が膨大であり、整理と分析に苦戦はしているものの、これまでの研究による分類・分析のパタンが出来ている。 以上の状況を踏まえて、現在までの研究課題への取り組みは順調に進んでいると判断され、今後在朝日本人及び日本統治期における大邱府関連研究への新しい視点が提示できるよう に努めるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
1)土地台帳に基づく関連情報の収集記録調査の継続:日本統治期に作成された韓国大邱市の旧土地台帳をベースにし、在朝日本人の歴史を記録・解明するという本研究課題は、現在当初目標とした大邱市旧日本人居留地の3/4以上の土地台帳資料を入手している。平成2年度においても前年度に引き続き、大邱市及び釜山国家記録院に保管されている土地台帳を調査し、関連情報収集調査を行う。 2)フィールワークによる旧日本人居住地の現状を記録: 土地台帳に基づく関連情報の収集記録調査の結果と地籍図を照らし合わせて、旧日本人所有地の現状を確認・記録する。また、これまでの研究によって広がった人的ネットワークにより地域へのアプローチが容易になり、地域民から多数の個人資料(画像、文献資料)を確保することができたので、対象地域のフィールドワークをより強化し、有益な資料収集を図る。 3)大邱の旧日本人町に関する文献及び関連資料の収集(韓国・日本): 在朝日本人の実態解明により充実をはかるために、大邱市の旧日本人居住地に関する文献及び関連資料を収集する。日本国内にある文献資料を活用するとともに、大邱市市史編纂委員会、大邱市立図書館、国史史料編纂委員会、国家記録院、国立国会図書館などの韓国国内の関係機関に保管している資料を収集する。さらに、これまで申請者の在朝日本人調査経験の中で確保している大邱出身の在朝日本人のインタビュー調査を実施して情報収集を行う。 4)調査成果のデータベース化作業:研究の結果を今後関連研究者が活用できるように収集資料を整理し、データベースの構築作業を行う。 5)学会での発表及び論文投稿(学術的還元):調査資料の量が増えその分析と整理に追われて学会発表及び論文投稿が遅れがちであるが、令和2年度はより多くの研究成果を日本と韓国の学会などを通じて発信し、積極的に学術的還元をはかる。
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Causes of Carryover |
膨大な資料の整理が間に合わず、資料集の発刊が遅れているので、その分予算が使えなかったため。最終年度の資料集発刊費用として使用するつもりである。
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