2018 Fiscal Year Research-status Report
Anthropology of Magical Tattoos in Southeast Asia: Comparative Study of Body, Knowledge and Power
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17K03300
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イレズミ / 身体 / 東南アジア大陸部 / タイ / 呪術 / 宗教実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、文字、身体、知識、力の相互関係に重点を置いて、東南アジア大陸部の複数地域にてフィールド調査を実施して一次データを収集した。 8月中旬にカンボジア・プノンペンおよびラオス・ヴィエンチャンにて、2月末に、北タイ・チェンライ県メーサーイ、東北タイ・コーンケーン、ミャンマー・シャン州タチレクにて、さらに3月中旬には中部タイ・ナコンパトムにて、インタビューおよび参与観察を通じてデータの収集を行った。 カンボジアとラオスでは、共産主義政権時代に宗教的実践の多くが抑圧されていたことが知られているが、比較的緩やかと考えられているラオスでも呪的実践の抑圧についてインタビューが得られたことは興味深かった。実際に呪的イレズミの実践は両国とも独自伝統としては非常に低調であったものの、両国ともにタイのサックヤンを積極的に取り入れる傾向にあることが観察できた。地域における呪的イレズミのセンターとしての位置づけが、近年のタイに見られるといえる。 ミャンマーの調査では、元僧侶の呪術的実践を行う宗教専門家から話を聞くとともに、呪術実践を参与観察することができた。知識の伝達に関連しては、タチレクに接する北タイのメーサーイのみならず、チェンマイなどからも僧侶や呪術師がミャンマーのシャン州を訪れて、呪術実践でみられる呪文の交換と同様の、サックヤンの交換や売買を通じて知識を拡大している状況について情報を手に入れることができた。また北タイのタイ―ミャンマー間に関しては、現在もシャンの呪術およびサックヤンが秘匿性の高いものとして受け取られている様子がうかがえた。 そのほか、コーンケーンでのバラモン僧の宗教儀礼マハーシヴァ・ラートリーや、ナコンパトムのバーンプラ寺院での年中儀礼ワイクルーに参加して、宗教儀礼における身体感覚のあり方や、憑依実践の様子について、参与観察のもと一次データを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、タイ以外の東南アジア大陸部の諸地域にて調査を実施することができた。選定した地域の多くはタイ語がかなり流通する地域でもあり、現地アシスタントを使うことによって、慣れない土地でも効果的な調査ができたのは、今後の研究活動にも活かせる大きな収穫であった。今年度は学会および論文としての成果報告もより実質的な形で進められたので、最終年度も同じ形を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けては、呪術師やクライアント、およびその家族など、人間に焦点を当てたデータ収集を行いたい。引き続いて東南アジア大陸部の複数地域での調査を補足的に行いながら、タイの呪的イレズミ実践を周辺地域との繋がりのもとで描き出せるようにしたい。その際、今年度に新たにラポールを得た複数の俗人宗教専門家との関係を活かしながら、フィールド調査を通じて一次データをできるだけ厚く収集したい。
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Causes of Carryover |
他の業務スケジュールの影響で、海外調査の日程を予定よりも1日短縮することになったため、わずかに残額がでてしまった。小額であるが、次年度のフィールド調査日程を多少厚くすることで,十分な成果が出るように進めたい。
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