2021 Fiscal Year Research-status Report
An Antholopological Study on the Social Configuration of 'Religion' in Iran
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17K03302
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
椿原 敦子 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (00726086)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 儀礼 / ネオリベラリズム / 映画 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も調査予定地での感染症拡大により現地調査が実施できなかった。そこで、(1)映像・出版資料の新規収集と分析、(2)フィールド調査にもとづく成果公開を行った。 (1)に関しては、イラン革命前と後のフィクション映画についての資料を重点的に収集し、儀礼の実践に関する描写がどのような文脈で用いられ、どのような技巧を伴っているのかを分析した。革命前後の比較によって通時的な「儀礼への宗教界や国家の関与」を明らかにすることができた。この調査の意義は、従来は12イマーム・シーア派に特有の<宗教儀礼>という視点から研究されてきたイランの追悼儀礼について、その宗教性を一旦留保した上で国家や宗教界が時代ごとにどのような態度を示してきたかを検討した点にある。先行研究においても、20世紀初頭からの国家による追悼儀礼の包摂は、近代化・世俗化や中央集権化といった要請から行われ、必ずしも宗教界の見解とは一致しなかったことが指摘されている。20世紀後半以降のイランのフィクション映画における追悼儀礼の描写を分析することで、村落や下町の<民俗文化>としての扱いから、次第に儀礼のパフォーマンスが<伝統芸術>として演出上の技巧に用いられるようになったことが明らかにできた。イラン革命後には追悼儀礼の描写は相対的に減少し、追悼儀礼が体現する殉教物語そのものを題材とした映画が出現した。このことは、映画を<宗教的>な教化の手段とするという革命後の政策と関係していると考えられる。この研究成果の公開は、口頭発表および論文により2022年度に行う予定である。 (2)に関しては昨年に続き、フィールド調査で収集したデータの分析を行い、ネオリベラリズムがイランの若者たちのモラリティとどのように関わっているのかを儀礼の実践から考察した。2021年度に口頭発表を行った結果を踏まえて、2022年度には論文を執筆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度以降は調査地での資料収集と補足のフィールド調査が実施できず、プロジェクトの当初の計画を全て遂行することはできなかったが、計画を修正し、文献・映像資料による分析を行うよう変更した後は、ほぼ順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症の状況によりフィールド調査実施の見通しが立たないため現地調査は基本的に行わないものとし、映像資料の分析を中心に研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度中に予定していた国外・国内出張ができなかったため。次年度は計画を変更して国外出張は行わないものとし、研究成果発表のための国内旅費、研究補助員への謝金、資料購入に本助成金を充てる。
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